IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太
イエイリ・ラボ体験レポート
Vol.57
CIM演習セミナー
【イエイリ・ラボ 家入龍太 プロフィール】
BIM/CIMやi-Construction、AI、ロボットなどの活用で、生産性向上やコロナ禍などの課題を解決し、建設業のデジタル変革(DX)を実現するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式サイトはhttps://Ken-IT.World

建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望などをお届けする予定です。

はじめに

建設ITジャーナリストの家入です。2023年度から国土交通省はいよいよ、BIM/CIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング/コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の原則化をスタートさせました。

BIM/CIMモデルとは、設計や施工の対象となる建物や土木構造物の形状を3次元で立体的に表現した「3次元モデル」で表現するのが特徴です。3次元モデルの中には部材の名称や材質などの仕様をテキストデータ化した「属性情報」や、2D図面など機械判読できない「参照資料」が内蔵されています。

▲2022年12月20日に開催された「CIM演習セミナー」
様々なソフトを連携して立体交差の作成を行い、照査も行った

▲BIM/CIMモデルは、3次元モデル、属性情報、参照資料からなる

これまでは一つの構造物を表すのに、平面図、立面図、断面図など複数の図面を組み合わせていましたが、BIM/CIMでは1つのデータで済みます。また、属性情報を内蔵しているので、図面や数量表などの設計図書やCG(コンピューターグラフィックス)を自動的に作れるのが効率化につながります。構造解析や流体解析などの技術計算を行ったり、施工段階では施工手順のシミュレーションや施工管理に使ったり、完成後は維持管理に使ったりすることもできます。

BIM/CIMモデルには、様々な目的にあったものがあり、地形モデルや地質・土質モデル、線形モデル、土工形状モデル、構造物モデル、統合モデルなどがあります。

▲BIM/CIMモデルの分類

これまでBIM/CIMの適用範囲は、構造物の規模や設計、工事によって少しずつ拡大してきましたが、2023年度からは構造物の規模や設計、工事を問わず、すべての詳細設計・工事で原則適用となるのです。

建設コンサルタントや建設会社の中には、3Dモデルを作った経験がないなど、BIM/CIMに対して何も準備してこなかったという企業も多いのが実情です。または、これまで3D関係のデータ作成は、すべて外注に任せてきたという会社も、原則化となれば最低限の3Dモデルくらいは、自社で作成できる体制を作っておくべきでしょう。

2022年12月にフォーラムエイトが開催した「CIM演習セミナー」は、BIM/CIMのうち、土木分野の「CIM」活用にフォーカスしたものです。構造物や配筋3Dモデル作成の初歩から、他ソフトとのデータ連携による干渉チェックや設計照査、さらにはUC-win/RoadやAllplanによる本格的なデータ活用までを体験。1日のカリキュラムで体験できるようにしたものでした。


製品概要・特長

CIMソフトで構造物を設計するというと、3Dの部材を一つ一つ、画面の中に配置したり、変形したりしながら手作業で作っていくというイメージがあります。BIM/CIM原則化が始まったのに対応して、「これから手間ひまのかかる3Dモデリングの方法を習得するのは、遅すぎる」と心配している方も多いでしょう。

その点、フォーラムエイトの製品は安心です。というのも、ボックスカルバートや橋脚、橋台など、構造物別に作られたソフトに、主要な寸法だけを入れると、後は自動的に3Dモデルを作ってくれる「パラメトリックモデリング」という方法を採用しているからです。汎用BIM/CIMソフトによる手作業に比べて、とても簡単に、かつスピーディーにCIMモデルを作れます。

▲パラメトリックモデリングによるCIMモデルの作成。入力画面(上段)で主要寸法を入力するだけで、自動的に3Dモデル(下段)が作成できる

その証拠に、今回のセミナーでは、わずか1日の間にボックスカルバートのCIMモデルを作っただけではありません。さらに3Dによる詳細な配筋モデルを作ったり、UC-win/Roadに読み込んで地形や盛り土と一体化させて、そこを通る運転者の目線で完成イメージを確認したりと、多くの作業をこなしたのです。

こうした簡単かつスピーディーなCIMモデル作成が可能になったのは、フォーラムエイトは1980年代から開発・販売を続けてきた土木設計ソフト「UC-1シリーズ」の進化のおかげです。

開発当初は設計計算書を作成するのが主な機能でしたが、時代とともに進化して、いまでは設計した構造物の3Dモデルや詳細な3D配筋モデルまで、自動作成できるようになっています。そして、構造物の主要寸法を入力するだけの「パラメトリックモデリング」によって、橋台や基礎、ボックスカルバートなどの3Dモデルを作れる「UC-1 BIM/CIMツール」という製品まで登場しています。

一方、昨今のBIMの普及に対応するため、フォーラムエイトでは欧州を中心に普及しているBIM/CIMソフト「Allplan」シリーズもラインアップに加えています。そしてUC-1シリーズやリアルタイムVR(バーチャルリアリティー)システム「UC-win/Road」とも、データ互換性を年々、高めています。

UC-1シリーズのパラメトリックモデリング機能で作成したCIMモデルは、標準的な形状なので、現場の地形や他の構造物など建設現場独自の条件には対応していません。そこで、UC-1シリーズで作ったCIMモデルを、AllplanやShade3Dや他社の汎用3DCADなどで修正することで、案件ごとの条件に合ったCIMモデルを完成させることができるのです。

こうしたソリューションの進化や充実により、フォーラムエイトのUC-1シリーズによって「BIM/CIM原則化」に取り組み、UC-win/RoadやAllplan、さらには高度な構造解析が行えるEngineer’s Studio®と連携させることによって、建設DX(デジタル・トランスフォーメーション)の世界まで、活用を進めることができるようになりました。


体験内容

12月20日の午前9時半から午後4時半まで、Zoomによるオンラインセミナー形式で「CIM演習セミナー」が開催されました。講師を務めたのは、フォーラムエイト解析支援グループ グループ長の柳正吉さんと、同グループの川原幸之助さんです。

午前中はまず、柳さんがBIM/CIMの基本や動向、実習課題の説明などを行いました。その後、川原さんの解説のもと、実際にフォーラムエイトのソフトやクラウドを操作しながらの実習に入りました。

驚くべきは、そのスピード感です。最初のわずか2時間ほどで、道路の交差点を立体交差化するプロジェクトを想定して、道路とボックスカルバートの基本計画用CIMモデルを完成させていました。

使用したソフトはUC-win/Roadと、構造物の3Dモデルを簡単に作れるパラメトリックツールです。まずUC-win/Roadを立ち上げて、「国土交通データプラットフォーム」より、現場の地形をCityGMLというデータ形式でインポートします。そこにUC-win/Roadが内蔵している地表面の航空写真テクスチャーを張り付けると、建物や地形の3Dモデルが出来上がりました。その後、立体交差する側の道路の縦断線形に従って盛土の3Dモデルを作りました。

▲UC-win/Roadに「国土交通プラットフォーム」の3D地形と、航空写真テクスチャーを読み込み、建設地点の3Dモデルを作成

▲縦断線形から立体交差する側の道路の盛土を作成

続いてボックスカルバートの3Dモデルを作ります。「3Dパラメトリックツール土工」というソフトを立ち上げ、翼壁付きボックスカルバートのパラメトリックモデルに、カルバート外形の高さや幅、壁厚などの主要寸法を入力していきます。

断面内部の角に斜めにする「ハンチ」の寸法も細かく設定できます。また、道路が直交していない現場の場合には、カルバート全体を斜めにする「平面斜角」も設定できます。今回は直角のカルバートにしました。出来上がったボックスカルバートの3Dモデルは、IFC形式で保存しました。

▲ハンチの寸法も細かく入力できる
 

▲自動作成されたボックスカルバートの3DモデルをIFC形式で保存する

今度はまたUC-win/Roadに戻って、先ほどの盛土の3Dモデルに、今作ったボックスカルバートの3Dモデルをインポートして合体させます。ボックスカルバートの翼壁は、盛り土の中に埋もれるような形になりますが、UC-win/Roadには盛り土端のモデルも用意されているので、それを翼壁の横にはめ込むだけ完成です。面倒な形状を3Dモデルで作る必要はありません。

ここまでの作業が、わずか2時間弱で行えたわけです。パラメトリックモデリングによるCIMモデル作成のスピード感を実感しました。

お昼休みの後は、さらにパワーアップして、ボックスカルバートのCIMモデルの自動設計する体験です。使用したのは「UC-1Cloud 自動設計BOXカルバート」というクラウドシステムです。

午前中の体験では、ボックスカルバートの壁の厚みなどは、あらかじめ設計計算で求めたうえで、パラメトリックモデルに入力する必要がありました。その点、このクラウドシステムは、応力照査などの設計計算を行ったうえで、さらに3Dモデルまで作ってくれるのです。

そのスピード感を生かして、単ボックスと2連ボックスのボックスカルバートの3Dモデルを作成しました。入力データはボックスカルバートの外形寸法や地盤の土質や定数、コンクリートの設計基準強度、単位重量、そして使用鉄筋の径や基準パッチなどです。

そして自動設計ボタンを押すと、設計計算が行われ、応力がアウトになっている鉄筋や壁厚などがすぐにわかります。これらを微修正して自動設計を繰り返すと、あっという間に設計が完了。ボックスカルバートのパラメーターが決まったので、基本設計は完了です。

続いて「BOXカルバートの設計・3D配筋」というソフトを立ち上げ、先ほどの設計計算で求めた主要寸法や鉄筋関係のパラメーターを、翼壁付きボックスカルバートの入力画面から入力。詳細な配筋付きの3Dモデルや図面を自動作成しました。

出来上がった3Dモデルは、Allplanのネーティブファイル「a形式」や他社のBIM/CIMモデルに読み込める「IFC形式」、一般的なCADソフトで使える「DWG形式」や「DXF形式」、SketchUpや3DPDFソフトで使える「3DS形式」などで出力できるので、後処理もスムーズです。

「RFC形式」に出力してフォーラムエイトの「3D配筋CAD」に読み込むと、鉄筋の干渉チェックが行えるほか、一般構造図や配筋図、加工図といった2D図面を作成することができます。

また「IFC形式」でフォーラムエイトの「Shade3D」に読み込むと、レンダリングなどの機能によって、表面材質を変更して高画質のCGやアニメーションの作成も可能です。さらに「BIM/CIM照査オプション」を使うと、属性情報を変更、編集できるほか、照査シートによって設計条件との整合性や用地の余裕幅などのチェック、そして鉄筋と部材の干渉チェック、干渉回避などが行えます。

セミナーの最後は、「Allplan」の紹介でした。汎用BIM/CIMソフトだけあって、詳細な配筋機能や、鉄筋やコンクリート、型枠などにカスタマイズしたレポート機能、自由自在な3Dモデリング機能、各種レンダリングによるプレゼンテーション機能と、まさに「なんでもあり」の機能が備わっています。欧州を中心に普及しているソフトなので、ぜひ、日本でもユーザーが増えてほしいところです。

▲ボックスカルバートの3Dモデルを、UC-win/Roadに読み込み、盛り土の真ん中に配置する

▲盛り土の間に配置されたボックスカルバート
 

▲翼壁まわりは盛り土端部のパーツで埋め込み、完成した
 

▲「UC-1Cloud 自動設計BOXカルバート」の入力画面

▲ボックスカルバートの配筋付き3Dモデルが完成した
 

▲「BIM/CIM照査オプション」による設計
 

▲計算結果。底版のせん断応力度だけNGになったので、設計値を微修正する

▲鉄筋同士の干渉チェック
 

イエイリコメントと提案

国交省によるBIM/CIM原則化時代をついに迎えて、3Dモデリングに取り組む人はこれからも増えてくるでしょう。というのも、手描きの紙図面がCADに置き換わったように、近い将来、BIM/CIMや3Dモデルを扱うことは、建設コンサルタントや建設会社にとって、常識になると思われるからです。BIM/CIM原則化が実施されたことは、自社で内製化し始めるのによい機会と言えます。

今回のCIM演習セミナーで行ったように、パラメトリックモデルによって3Dモデルを作り、納品するのは、BIM/CIMを内製化するために、有力な対応方法です。しかし、最終的にはプロジェクトごとの敷地や条件に合わせて、3Dモデルをカスタマイズしていく必要があり、そのためにも一般のBIM/CIMソフトも地道にマスターしていくことも重要です。

これからは、パラメトリックモデリングと、一般のBIM/CIMソフトの両方を、上手に使いこなすことが、設計や施工の生産性を上げるために重要になってくるでしょう。

▲汎用BIM/CIMソフト「Allplan」に3Dモデルを引き継げば、本格的な機能が使える


次号掲載予定
河川シリーズ体験セミナー 2023年4月25日(火)

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