IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太
イエイリ・ラボ体験レポート
Vol.56
デジタル田園都市実現支援セミナー
【イエイリ・ラボ 家入龍太 プロフィール】
BIM/CIMやi-Construction、AI、ロボットなどの活用で、生産性向上やコロナ禍などの課題を解決し、建設業のデジタル変革(DX)を実現するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式サイトはhttps://Ken-IT.World

建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。

はじめに

建設ITジャーナリストの家入です。人口減少や少子高齢化が進む日本で、とりわけ深刻になっているのが地方です。東京圏への転入は増えている一方で、過疎化はますます進行し、地域の産業は空洞化が進んでいます。そして都道府県別でみた労働生産性の格差は最大で1.5倍(2018年)も開いているのです。

こうした問題を、デジタルの力で解決しようという取り組みが「デジタル田園都市国家構想」です。「田園都市」という言葉からイメージできるように、地方に様々なデジタル関連のインフラを整備して、首都圏と同じように便利で快適な暮らしや仕事が行える環境を整え、地方に移住する人を増やそうという取り組みです。

デジタル庁、内閣官房、内閣府が連携して推進するこの構想の基本的な考え方は「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指す、というものです。

デジタルの力を活用して、(1)地方に仕事をつくる、(2)人の流れをつくる、(3)結婚・出産・子育ての希望をかなえる、(4)魅力的な地域をつくる、(5)地域の特色を活かした分野横断的な支援を挙げています。その目標は、2024年度末までにデジタル実装に取り組む地方自治体を1000団体まで増やすことです。

フォーラムエイトのソリューションが関連するのは、特に(4)と(5)の部分です。(4)ではドローン物流や自動運転、MaaS(マース:Mobility as a Service)、インフラ分野のDX(デジタル変革)、3D都市モデルの整備・活用、防災DXなどがあります。また(5)では、スマートシティー関連施策の整備などがあります。

こうしたデジタル技術をフルに活用したまちづくりは、これまで例が少なかっただけに、立場が異なる多くの人々が「いったいどんなまちになるのか」「人々のライフスタイルはどう変わるのか」「災害が起こったとき、まちに暮らす人の安全はどう守られるのか」というイメージを表現したり、合意形成を図ったりするのが難しい面もあります。

そこで活用が期待されるのが、フォーラムエイトのインフラ設計やVR(バーチャルリアリティー)、解析・シミュレーション、WEB・クラウドに関するソリューションです。まさにフォーラムエイトの製品群すべてと言っても過言ではありません。

これらのソリューションは各地の「デジタル田園都市」構想を実現するための検討や合意形成、交付金を申請するためのわかりやすい資料作成や、田園都市の運営を支えるデジタルツイン(デジタルの双子)プラットフォームとして活用できます。

今回のセミナーは、デジタル田園都市構想に関する政府の施策と、フォーラムエイトのソリューションとの関係、そしてUC-win/RoadやF8VPSなどを使った、デジタルツインの具体的な作り方を、わずか3時間で解説する、中身の濃いものになりました。

▲デジタル田園都市国家構想の全体イメージ(資料:デジタル庁)

 

▲フォーラムエイトのVR/CGや解析、設計、ウェブクラウドなどの製品群は、デジタル田園都市構想と関連性が高い


製品概要・特長

デジタル田園都市構想のプラットフォームとしての活用が期待されるソリューションの筆頭格となるのが、3DリアルタイムVRシステム「UC-win/Road」です。

地形や道路、街並みなどの土木・建築インフラをスピーディーに3DのVRとして表現できるだけでなく、車や人など街中を動くもの、さらには雨や雪などの気象現象や土石流や洪水といった自然災害まで、現実のまちを丸ごと再現できるプラットフォームだからです。

▲UC-win/Roadで再現した東京・新木場駅前広場

さらには実際にハンドルや座席を備えた様々なドライブシミュレーター装置や、自動運転システム、ヘッドマウントディスプレーやAR(拡張現実)システムと連携することで、運転者や歩行者の視点で、事故などの危険を安全に繰り返し体験することもできます。

▲UC-win/Roadと連動するドライブシミュレーター。その性能は警察庁から形式認定を受けるほど

API(Application Programming Interface)や、プログラミング言語「C++」によるカスタマイズ機能が充実しているため、他のソフトやシステムと連携できます。また都市モデル自体も4Dシミュレーションによって施工手順を表現したり、工程表と連携したりできます。

データ交換の点ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)でのデータ交換に使われる「IFC形式」のほか、「CityGML」にも対応しているため、国土交通省が開発・公開している3D都市モデル「PLATEAU」などの都市モデルを取り込むこともできます。

UC-win/Roadで作成したデジタルツインを、WEB上で多くの人が利用できるようにしたシステムが「F8VPS」(WebVRプラットフォーム)です。オフィスや学校、工場、ショールームなどを3Dでバーチャル化し、パソコンやスマートフォンなどのブラウザー上で使えます。

茨城県つくば市にある国土交通省の国土技術政策総合研究所(国総研)をVR化した「VR国総研」は、F8VPSによって作られ、WEB上で一般公開されています。研究所内の研究棟やi-Construction関係の実証実験などを行う建設DXフィールド、そして研究所全体にまたがるテストコースなどが、忠実にVR化されているので、現地に行かなくても研究所見学を行った気分になります。

▲F8VPSで開発され、WEBで一般公開されているVR国総研

高性能のパソコンやソフトウェアがなくても、本格的なVRが体験できるので、まちづくりの計画や施設を多くの人々に公開し、PRや合意形成に使えます。また、同じVR空間に複数の人が「アバター」として入り込み、リアルタイムで会話やコミュニケーションを図れる「メタバース」としての機能もあります。建築学科などのオンライン授業にも活用できます。

デジタル田園都市をVRで再現するためには、様々な建物や機器、車両などの3Dモデルを用意する必要があります。UC-win/Roadには、数千点もの3Dモデルが付属していますが、時にはオリジナルで作成する必要が出てくる場合もあります。

▲オンライン授業でのF8VPS活用例

そんなときに強力なツールとなるのが統合型3DCGソフト「Shade3D」です。建物から車両、人物まで、自由自在に3Dモデリングができます。最近のバージョンアップで3次元CADのような作図機能や、BIM/CIMと連携できる「IFC」形式やPLATEAUの都市モデルにも使われている「FBX2020」形式の入出力機能も備えています。

写真のような高画質のCGを短時間で作成できる「GPUレイトレーシング」機能も使えます。建造物やインテリア、人物などの3Dモデルを収録した「Shade3D 実用データ集」も21シリーズ、計8000点が発売されているので、高品質な3Dモデルを活用できます。

▲Shade3DのGPUレイトレーシング機能の例


デジタル田園都市の構想を3Dゲームのようなストーリーでプレゼンしたい場合には、「スイート千鳥エンジン」というシステムが用意されています。ARにも対応できるので、建物やインフラの建設予定地で、完成予想図などを現地プレゼンするのにも使えます。

▲スイート千鳥エンジンで作成したゲームの例


体験内容

9月13日の午後1時半から4時半まで、Zoomによるオンラインセミナー形式で「デジタル田園都市実現支援セミナー」が開催されました。講師を務めたのは、フォーラムエイト執行役員システム営業マネージャの松田克巳さん、同・執行役員 営業サポート管理マネージャの新田純子さんです。

前半の部ではデジタル田園都市構想の政策や取り組み状況による解説や、同社のソリューションと活用例についての解説がありました。そして後半の部では、実際にUC-win/Roadを使って、実在する都市のデジタルツインを作り、新たな建物や構造物を設置してプレゼンする実践的なハンズオントレーニングが行われました。

後半の部の課題となったのは、東京・新木場駅周辺の街並みです。まずはUC-win/Roadに、国交省のPLATEAUからダウンロードしてきたデータを読み込みます。すると地形の起伏や実在するビルの3Dモデルが配置されたデジタルツインができました。

続いて、この街並みの中に、十字形の道路や交差点をUC-win/Roadの機能を使って作成していきます。地図上に道路が通過する位置を数点、クリックしていくだけで道路の3Dモデルが即、出来上がっていきます。地盤は3Dの起伏がついていますので、高さも調整します。

そして今度は新たに建設する建物をイメージして、新たな建物の3Dモデルを配置していきます。VRによって既存の街並みの中に、新しい建物や施設を造る検討は、PLATEAUのようなオープンデータを使うと、ほんの十数分ほどでできてしまうことが実感できました。

この後は、街並みを走る車や人間を配置して、実際に動かしていきます。交差点で渋滞が起こる様子や、時刻・天気が変わる様子を、ドローンや歩行者、ドライバーの視点などに切り替えて見られることを体験しました。新木場駅前の街路樹の本数を変えて、景観の比較検討も行いました。

最後にサンプルデータで、様々なシミュレーションのプレゼンを体験しました。橋の完成予想図と耐震解析ムービー、4Dによる橋脚の施工手順シミュレーションを使うと、設計や工事をわかりやすくプレゼンできることがわかりました。

このほか、2021年に静岡県熱海市で発生した土石流や、東日本大震災での岩手県釜石市の津波による浸水過程のシミュレーションも紹介されました。VRを活用することで、だれもが自然災害の発生状況や全体像を理解できることがわかりました。

同時に、現場でどのような避難状況になっているのかも、避難解析ソフトやVRによってリアルに想像できました。都市で起こっていることを、マクロな視点やミクロな視点の両方で理解できるのも、VRの利点です。

■UC-win/Road によるデジタルツイン作成の流れ

▲地理院タイルで新木場駅付近の地形を読み込み、PLATEAUの建物モデルをインポート
 

▲PLATEAUの3Dモデルを読み込むと、実在するビル群が立ち上がった
 

▲街並みの中に作成された道路や、交差点の右手前に配置した新たな建物の3Dモデル

▲ドライバーから見た夜間、雨天での運転風景

▲街路樹の樹種や本数を変えて行った景観検討
 

▲静岡県熱海市で発生した土石流災害の再現VR
 

▲津波が迫る町中での避難再現VR

イエイリコメントと提案

フォーラムエイトは、土木構造物の設計ソフト「UC-1」シリーズの開発・販売からスタートしましたが、2000年にVRソフト「UC-win/Road」がラインアップに加わって以来、土木インフラにとどまらず車の運転シミュレーションなど、自動車の分野でもソリューションを広げていきました。

その結果、デジタル田園都市構想では、街並みだけでなく自動車の自動運転やモビリティー、ドローンによる輸送など、幅広い分野のVR化やシミュレーションを自社製品だけでカバーできるようになったと言えます。これまで開発を積み重ねてきたソリューションが、デジタル田園都市構想を支える強力なツールとして総合力を発揮する時代になるとは、驚きました。


次号掲載予定
CIM演習セミナー 2022年12月20日(火)


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(Up&Coming '23 新年号掲載)
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