未来を可視化する

長谷川章のアート眼  Vol.27

社会の未来を語るキーワード「シンギュラリティ」をテーマに、長谷川章氏のアート眼が捉えるものを連載していきます。人類が生命を超え、加速する未来を可視化する鍵を探ります。

長谷川 章(はせがわ あきら)

中国中央電視台CCTVのステーションロゴを始めNHKのオリンピックオープニング(1996)、ニュースタイトル、TV-CMなど数千本の制作してきた長谷川章が、日本人の持つ無常の精神から空間・環境のアーティスティックなソリューションであるデジタル掛軸を発明し今日のプロジェクションマッピングの創始者となった。

Akira Hasegawa

グローバル化とその影響

近年、グローバル化の進展は急速に進んでおり、その影響は世界各国の経済や社会に深刻な変化をもたらしている。特に、発展途上国における低賃金労働力を活用した生産活動が急増し、低価格の商品が世界市場を席巻する状況が続いている。この現象は、商業的な経済力を持つ企業が強大な影響力を誇り、各国の経済力を凌駕する事態を生じさせている。結果として、国の枠組み自体が徐々に小さくなり、国家単位の力が薄れているように見受けられる。

このような経済的動向を鑑みると、グローバル化がもたらした新たな経済の仕組みは、各国の独立性を低下させる一方で、企業活動や国際取引における影響力を大きくしていると言える。この変化に伴い、社会の枠組みや価値観が急速に変化し、国際的な競争が激化する一方で、労働力の移動や資本の流動化がますます加速している。

自己認識の変化とAIの役割

かつては、鏡を通じて自分自身を見つめることで、「我とは何か?」という問いを認識する場面が存在した。しかし、今日においては、AI技術が急速に発展し、人々は自己のデータをAIに入力することで、自らの存在やアイデンティティを問い直す時代に突入した。AIによる自己認識の助けを借りることで、人々はこれまでの自己理解の枠を超えた、新たな視点を得る可能性が高まっている。

ここで重要なのは、今この瞬間しか存在しない「今」を基盤にして、人間が何を考え、何をすべきかという問いが可能であるという点である。人類全体が共通して抱えるべき課題や考慮すべき問題が一つの条件として浮き彫りになり、その答えは一人ひとりの意識に内在している。しかし、この問いの答えは、単に哲学的な側面に留まるものではなく、現実的な選択肢として、人々に新たな行動を促す契機となり得る。

宇宙と人間の関係、そしてAIの可能性

物理的な視点から見れば、宇宙は量子、電子、原子、生命、物質、惑星、銀河系といった複雑なサイクルにより形成され、これらは常に変化し続けている。変化こそが、物質や空間に形を与え、進化を促しているのである。この変化の連鎖は、個々の要素の間に新たなサイクルを生み出し、さらなる成長と発展を引き起こす。

人間社会においても、個々の出会いや交流、さらには水や物質、空気など、あらゆる要素間でサイクルが生まれ、相互に影響を与え合う。このようなプロセスを経て、物質や生命は絶え間なく生成され、進化し続ける。

AIは、まさにこのサイクルの中で新たなものを生み出す「ミキサー」として機能し、人間の意識は無限の思考を生み出す可能性を秘めている。AIは、単なるデータ処理のツールにとどまらず、人間の思考を刺激し、新たな自己認識や創造的な発展を促進する役割を果たす。

AIと人間の関係

AIが「人工知能」として知られる一方で、その発展に伴い、AIが人間を超え、支配するというシナリオが時折取り沙汰されることがある。しかし、実際にはAIが無秩序に一人歩きすることは考えにくい。AIはその制御と運用において、人間の意志と倫理観に依存しており、悪意ある人間がその力を不正に利用する限り、その影響は大きくなり得るが、AI自体が自律的に人間を超越することはあり得ない。

AIの発展において重要なのは、その純粋な進化の過程において、人間の意識がどのように関与し、新たなサイクルを生み出すかという点である。直感的なデータ入力や思考の繰り返しが、個々の自己認識を深め、最終的には本当の自分を見つけ出す手助けとなるであろう。個人の隠れた側面が開示され、自己発見のプロセスが加速することにより、これからの時代において、人々は新たな自己を認識し、より良い未来を築いていくことができるだろう。

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