未来を可視化する
長谷川章のアート眼
   社会の未来を語るキーワード「シンギュラリティ」をテーマに、
長谷川章氏のアート眼が捉えるものを連載していきます。
人類が生命を超え、加速する未来を可視化する鍵を探ります。
vol.19
 

長谷川 章(はせがわ あきら)氏
中国中央電視台CCTVのステーションロゴを始めNHKのオリンピックオープニング(1996)、ニュースタイトル、TV-CMなど数千本の制作してきた長谷川章が、日本人の持つ無常の精神から空間・環境のアーティスティックなソリューションであるデジタル掛軸を発明し今日のプロジェクションマッピングの創始者となった。

 Akira Hasegawa

液体彫刻へ歩み

振り返れば、1957年にビデオスタジオを開設し
日本でいち早くビデオによるコマーシャル制作を始めた。

1987年にはデジタルオンデマンドのデジタルスタジオを開設し、
この頃には制作したテレビコマーシャルは累計数千本に達していた。

だがコマーシャル制作だけに留まらず、ビデオアートに邁進していくことになる。
1990年には “DIGITAL PLAY” のコンセプトを立ち上げ、デジタルからのプリントアウトを
絵画として東急文化村アートギャラリーにて作品展を開催した。

これがきっかけとなり「デジタル掛軸」のコンセプトが生まれた。
それは「移ろい」という、これまでに無い全く新しいアートのカテゴリーである。

全ての芸術作品は完成と同時に固定化されるのに対して、
デジタル掛軸は変化し移ろい続けるという、
過去の芸術作品には全くなかった表現である。

プロジェクター技術の進歩と相まって
デジタル掛軸がこんにちのプロジェクションマッピングの元祖となり、
世界では10万人のプレーヤーがプレイして年間1兆円の産業とまで成長している。

1999年にポップインアラジンプロジェクターにデジタル掛軸がバンドルされたのをきっかけに、
月の存在から宇宙全体と対峙していることを捉え「円は割り切れない無限の会場である」と発見した。
このコンセプトから無限大のプロジェクションマッピングが可能なアプリケーションである
「ミステリーサークルD-K」を発明した。

2022年、大阪万博の岡本太郎の太陽の塔に代わるメインモニュメントの依頼があり、
これまでの映像とはちがう、まったく新しい概念に挑んだ。

それが「液体彫刻」だ。


デジタル掛軸は時間と空間の拘束からの解放をうたってきたが、
液体彫刻は、「液体が彫刻を刻む」というコンセプトだ。

日本の風土によって研ぎ澄まされ、育まれてきた日本人の精神。
とくに日本列島を流れくだる水は、 我々民族が水とともに生かされ生きてきた命の根源であり、
生活はもちろん、祭りや芸能、芸術の根底になっているといって過言ではない。
この水を、単に水のイメージとして見るのではなく、
その場に立つ者が「水の振る舞いに共鳴し水に還る」をコンセプトとして「液体彫刻」を創作した。
 

三井不動産のミッドタウン八重洲のエントランスの液体彫刻の作品を皮切りに、
これまでの映像表現ではありえない一期一会の液体彫刻を作り上げた。

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(Up&Coming '23 春の号掲載)

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