Vol. 49
このコーナーでは、ユーザーの皆様に役立つような税務、会計、労務、法務などの総務情報を中心に取り上げ、専門家の方にわかりやすく紹介いただきます。今回は、令和7年1月1日に廃止される申告書等の控えへの収受日付印押捺について解説いたします。
 
税務申告書等控えへの収受日付印廃止について

はじめに

 令和7年1月1日より、税務に関する申告書等[1]の控えに対する収受日付印の押印が廃止されます。従来の紙媒体による提出手続きに依存していた方々にとっては、この変更に伴って対応方法の見直しが必要となる場合があります。本稿では、収受印廃止の背景や具体的な変更点を整理し、実務上の影響と対応策について解説いたします。

収受日付印廃止の背景

 現在、国税庁は税務行政におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)を積極的に推進しています。電子申告(e-Tax)の利用は拡大しており、令和2年4月以降、大法人[2]にはe-Taxによる申告が義務化されています。しかし、中小法人や個人事業主にはまだ義務化されていないため、紙媒体による申告を行うケースも少なくありません。
 これまで、申告書控えへの収受日付印は、金融機関や行政機関での証明資料として利用されてきました。しかし、こうした対応はデジタル化の潮流にそぐわないものとして見直されつつあります。この度の収受日付印廃止もその一環であり、これにより、紙での申告書提出を続けてきた方々も電子申告の利用を検討しなければならなくなる可能性があります。

収受日付印のイメージ

収受日付印廃止によって変化すること

収受日付印廃止の背景
 紙で申告書を提出する場合、従来は控えに収受日付印が押されていましたが、今後は正本のみを提出することとなり、控えを作成しても押印されることはありません。申告書控えの管理や提出記録は申告者自身が行う必要があります。

電子申告利用の推奨
 電子申告(e-Tax)を利用する場合、税務署からの「受信通知」が控えに代わる証明書として利用可能です[3]。この受信通知には、提出日時、受付番号、提出先税務署などが記録されており、金融機関や行政機関での提出書類としても活用できます。

従来の控えの代替となるもの

収受印の廃止により、金融機関や行政機関から提出日時や真正性の確認が求められる場合、以下の方法で対応可能です。

電子申告の場合
 上記のとおり、e-Taxの「受信通知」を保存することで、申告書提出の記録や証明をデジタルで管理できます。さらに必要に応じて「電子申請等証明書」を取得することも可能です。ただし、保存期間を経過するとメッセージボックスから削除されるため[4]気をつける必要があります。

紙での提出の場合
 国税庁は移行措置として、希望者に対し、提出日や税務署名を記載した「リーフレット」を交付すると発表しています[5]。これは、従来の収受印の代替として利用できます。

 また、以下のサービスを補完的に利用することもできます。

申告書等情報取得サービス(個人向け)
 所得税の確定申告書、青色申告決算書・収支内訳書について、紙で提出した申告書でも、e-Taxを通じてPDF形式で取得することができます。ただし、マイナンバーカードが必要となります。

保有個人情報の開示請求(個人向け)
 税務署に開示請求を行い、提出した申告書の内容を確認することができます。e-Taxを利用したオンライン請求も可能です。
 手数料300円(オンライン申請の場合は200円)が必要で、e-Taxでは手数料の電子納付をすることができます。
 申請書の写しを交付する場合は1か月程度を要すること、法人の申告書には利用できないことなどの注意が必要です。

税務署窓口での閲覧サービス
 税務署窓口で、過去の申告書を閲覧することができます。コピーは原則不可ですが、写真撮影が許可されています[6]

納税証明書の交付請求
 納税額や所得金額、未納の税額がないことなどを記載した証明書を取得することができます。e-Taxを利用したオンライン請求も可能です。
手数料として、税目ごと1年度1枚につき400円(オンライン申請の場合は370円)が必要で、e-Taxでは手数料の電子納付をすることができます。

DXを活用した効率化へ

 今回の改正は、税務手続きのデジタル化を促進し、長期的に業務の効率化を図る重要なステップです。従来の紙ベースの手続きに依存していた事業者も、この機会に電子申告への移行を検討することが推奨されます。
 電子申告を行うことのメリットとしては、
①提出日時がデジタルで記録されるため、従来の控えよりも迅速かつ正確な確認ができ、信頼性が高くなること
②ペーパーレス化を実現し、書類の郵送や保管の手間などの業務負担が軽減されること
③過去の申告データを簡単に参照・活用できるようになり、情報管理の柔軟性が増すこと
といったものが挙げられます。
 特に中小法人や個人事業主の方々にとっては、税務手続きの簡素化と正確性向上が期待されます。

おわりに

 今回の収受印廃止は、税務手続きのデジタル化を進めるための一歩です。この変化を「負担」ではなく「機会」と捉えることで、これまでの業務を見直し、効率化につなげることができます。特に電子申告の導入は、将来的な税務手続きの簡略化や業務の最適化を実現する大きな助けとなるでしょう。
 今回の変更に関する知識を深め、適切な対応を進めることで、よりスムーズな税務運営が可能になります。この変化を活用し、未来を見据えた業務改善を目指していきましょう。



[1]国税庁サイトでは「対象となる『申告書等』とは、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他の書類のほか、納税者の方が、他の法律の規定により、若しくは法律の規定によらずに国税庁、国税局(沖縄国税事務所を含む。)、税務署に提出される全ての文書をいいます。」と説明されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/onatsu/index.htm
[2]「大法人」とは主に、資本金1億円超の大企業等を指します。詳しくはe-Tax サイトをご覧ください。
https://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/index.htm
[3]詳しくはe-Tax サイトのQ&A をご覧ください。
https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/yokuaru01/13.htm
[4]e-Tax サイトのQ&A には、「受信通知及び申告に関するお知らせについては、メッセージボックスに格納された日から120日を経過すると『メッセージボックス(過去分)』画面に移され、格納されてから1,900 日間(約5 年間)を経過すると既読・未読に関わらず削除する」と記載されています。
https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/yokuaru05/08.htm
[5]詳しくは「申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&A」をご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/onatsu/pdf/0023001-078.pdf
[6]詳しくは国税庁サイトの「申告書等閲覧サービスの実施について(事務運営指針)」をご覧ください。
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/sonota/050301/01.htm

監修:久次米公認会計士・税理士事務所

(Up&Coming '25 新年号掲載)



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