Vol. 41
このコーナーでは、ユーザーの皆様に役立つような税務、会計、労務、法務などの総務情報を中心に取り上げ、専門家の方にわかりやすく紹介いただきます。今回は、適格請求書(インボイス)発行事業者に向けた案内と関連する補助金、禁止留意事項について解説いたします。
 
適格請求書(インボイス)発行事業者への案内

1.適格請求書(インボイス)発行事業者の皆様へ

適格請求書発行事業者として登録された情報(氏名・法人名・登録番号など)は、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」において公表されます。また、令和5年10月1日以降に行う課税取引について、原則、以下の義務が課されます。

1. 適格請求書の交付

取引の相手方の求めに応じて、適格請求書(インボイス)を交付する。

2. 適格返還請求書の交付

返品や値引きなど、売上げに係る対価の返還等を行う場合に、適格返還請求書を交付する。

3. 修正した適格請求書の交付

交付した適格請求書に誤りがあった場合に、修正した適格請求書を交付する。

4. 写しの保存

交付した適格請求書の写しを保存する。

適格請求書発行事業者の登録を受けている間は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、消費税の申告が必要となります。事業者免税点制度の適用はありません。

次の場合は、所轄税務署への届出手続が必要となります。

公表事項の追加・変更手続 提出すべき届出書等
免税事業者
・氏名、名称、法人の本店所在地を変更する場合
・個人事業者等の主たる屋号などを追加・変更する場合
・適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書
・適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書
登録失効手続
・登録の取消しを求める 場合(※1)
・事業を廃止した場合
・法人が合併により消滅した場合
・個人が死亡した場合(※1)
・適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書(※2)
・事業廃止届出書
・合併による法人の消滅届出書
・適格請求書発行事業者の死亡届出書

※1 令和5年10月1日以降の手続となります。
※2 消費税課税事業者選択届出書を提出している事業者が免税事業者になる場合は、消費税課税事業者選択不適用届出書の提出が併せて必要となります。

次の取消事由に該当する場合には、適格請求書発行事業者の登録が取り消されることがあります。

①1年以上所在不明である場合(「所在不明」とは、例えば、消費税の申告書の提出がない場合などにおいて、文書の返戻や電話の不通をはじめとして、事業者との必要な連絡が取れないときをいいます)
②事業を廃止したと認められる場合
③合併により消滅したと認められる場合(法人の場合)
④消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられた場合
⑤虚偽の内容を記載した適格請求書発行事業者の登録申請書を提出して登録を受けた場合


2.消費税の申告について

適格請求書発行事業者の登録を受けている間は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、消費税の申告が必要となります。

免税事業者の方が令和5年10月1日から登録を受ける場合は、登録日である令和5年10月1日以降の課税資産の譲渡等について、消費税の申告が必要となります。

消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付けおよび役務の提供です。


3.簡易課税制度について

簡易課税制度は、中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。

具体的には、納税地の所轄税務署長へ事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者は、その基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、売上げに係る消費税額に、事業の種類の区分(事業区分)に応じて定められたみなし仕入率を乗じて算出した金額を仕入れに係る消費税額として、売上げに係る消費税額から控除することになります。

簡易課税制度を適用するときの事業区分およびみなし仕入率は、右上の表のとおりです。


4.免税事業者の方が登録に合わせて簡易課税制度を選択する場合の特例

免税事業者の方が登録に合わせて簡易課税制度を適用しようとする場合は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を登録を受けた日を含む課税期間の末日まで※に提出すれば、その登録を受けた日から簡易課税制度の適用を受けることができます。

※例:令和5年10月1日に登録を受ける個人事業者の場合は、令和5年12月31日まで

※課税期間の末日が土・日曜日・祝日等に当たる場合でも、消費税簡易課税制度選択届出書の提出期間は延長されません(適用しようとする課税期間の末日までに提出する必要があります)

事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第一種 卸売業 90%
第二種 小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) 80%
第三種 農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含む)、
電気業、ガス業、熱供給業及び水道業
70%
第四種 第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業、第六種事業以外の事業(飲食店業等) 60%
第五種 運輸通信業、金融業及び保険業、サービス業(飲食店業に該当する事業を除く) 50%
第六種 不動産業 40%

5.関連する補助金

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更等に対応するために取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とした補助金です。持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組や、その取組と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。

●申請受付締切(第11回):2023年2月下旬

IT 導入補助金 デジタル化基盤導入類型

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の課題やニーズに合ったITツール導入費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートする制度です。

「デジタル化基盤導入類型」は、インボイス対応も見据えた企業間取引のデジタル化を推進することを目的として、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費が補助されます。

●申請受付締切(18次):2023年2月16日(木)


6.適格請求書発行事業者の禁止留意事項(下請法、独禁法違反)


 事例1
 ・「報酬総額11 万円」で契約を行った。
 ・取引完了後、インボイス発行事業者でなかったことが、請求段階で判明したため、下請事業者が提出してきた請求書に記載された
  金額にかかわらず、消費税相当額の1万円の一部又は全部を支払わないことにした。
  ▶下請法違反となります!

発注者(買手)が下請事業者に対して、免税事業者であることを理由にして、消費税相当額の一部又は全部を支払わない行為は、下請法第4条第1項第3号で禁止されている「下請代金の減額」として問題になります。


 事例2
 ・継続的に取引関係のある下請事業者と、免税事業者であることを前提に「単価10 万円」で発注を行った。
 ・その後、今後の取引があることを踏まえ、下請事業者に課税転換を求めた。結果、下請事業者が課税事業者となったにもかかわらず、
  その後の価格交渉に応じず、一方的に単価を据え置くこととした。
  ▶下請法違反となるおそれがあります!

下請事業者が課税事業者になったにもかかわらず、免税事業者であることを前提に行われた単価からの交渉に応じず、一方的に従来どおりに単価を据え置いて発注する行為は、下請法第4条第1項第5号で禁止されている「買いたたき」として問題になるおそれがあります。


 事例3
 ・課税事業者が、取引先である免税事業者に対して、課税転換を求めた。
 ・支払いできません。承諾いただけなければ今後のお取引は考えさせていただきます。」という文言を用いて要請を行った。
  また、要請に当たっての価格交渉にも応じなかった。
  ▶独占禁止法上問題となるおそれがあります!

課税事業者になるよう要請すること自体は独占禁止法上問題になりませんが、それにとどまらず、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げる、それにも応じなければ取引を打ち切るなどと一方的に通告することは、独占禁止法上問題となるおそれがあります。また、課税事業者となるに際し、価格交渉の場において明示的な協議なしに価格を据え置く場合も同様です。


出典・引用

[1]国税庁「適格請求書発行事業者の皆様へ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0021009-084_02.pdf
[2]商工会議所地区「令和元年度補正予算・令和 3 年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>公募要領」
https://r3.jizokukahojokin.info/doc/r3i_koubo.pdf
[3]IT導入補助金2022
https://www.it-hojo.jp/applicant/
[4]公正取引委員会「インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え方」
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice/invoice_jirei.pdf
[5]中小企業庁「生産性向上に取り組む皆様へ」
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/2021/1224/003_seisansei.pdf

監修:久次米公認会計士・税理士事務所




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