Vol. 40
このコーナーでは、ユーザーの皆様に役立つような税務、会計、労務、法務などの総務情報を中心に取り上げ、専門家の方にわかりやすく紹介いただきます。今回は、公益通報者保護法の改正とそのポイントについて解説いたします。
 
公益通報者保護法が改正されました!

事業者の違法行為を通報した労働者を保護する、公益通報者保護法が一部改正され、令和4年6月1日に施行されました。以下では、今回の改正のポイントをお伝えします。

1.公益通報者保護法とは

公益通報とは、事業者による違法行為などを労働者がしかるべき通報先に通報することをいいます。公益通報者保護法は、企業内部で内部通報を行った労働者を保護することと、内部通報の活用によって企業不祥事が早期に発見・是正されることを期待して、平成16年に制定されました。しかし、その後も企業による不祥事が長年にわたって通報されることなく放置されるという事例が見られました。そこで、令和2年に不祥事の早期是正により被害拡大の防止を図るべく、公益通報者保護法の一部が改正されました。

図1 公益通報者保護のイメージ
出典:消費者庁「公益通報ハンドブック―改正法(令和4年6月施行)準拠版」


2.改正法のポイント

1.「公益通報」とは

公益通報者保護法により保護される公益通報とは、1.労働者等が、2.労務提供先の法令違反等の通報対象事実について、3.不正の目的でなく、4.一定の通報先に対して行う通報であることを要します。

ア 「労働者」等の保護対象者について
保護対象者には、当該企業の正社員やアルバイト、パートタイマー、派遣労働者のほか、取引先の社員やアルバイト等も含まれます。今回の改正により、当該企業または取引先の役員や、退職後1年以内の退職者も保護対象となりました(改正法第2条1項)。

イ 通報対象事実について
「通報対象事実」は、刑法や食品衛生法、金融商品取引法など、対象となる法律に違反する犯罪行為や、最終的に刑事罰や行政罰に繋がる行為であることを要します。これまで刑事罰の対象行為に限定されていたところ、今回の改正で行政罰の対象行為を含めることとなりました(改正法第2条3項1号)。

ウ 通報先について
通報先は、労働者が働いている事業者内部、処分又は勧告等をする行政機関、その他事業者外部(報道機関等)の3通りあります。通報先ごとに公益通報として保護されるための要件が異なりますが、今回の改正で、行政機関や事業者外部への通報要件が緩和されました。具体的には、行政機関への通報では、これまで通報事実が真実であること(真実性)または真実であると考えたことについての相当な理由(真実相当性)といった要件が必要でしたが、今後は氏名等記載した書面を提出すれば真実性または真実相当性は不要となります(改正法第3条2号)。また、事業者外部への通報については、真実性・真実相当性に加えて、法3条3項各号記載の事由が必要ですが、今回の改正で、財産に対する損害が発生する可能性が高いことという事由や、勤務先に通報すれば通報者を特定させる情報が漏れる可能性が高いことという事由が追加されました(改正法第3条3号)。これまでよりも、保護される場合が広がり、外部通報を行いやすくなりました。

2.公益通報者の保護

公益通報を行った労働者に対して、通報を理由として解雇や不利益な取扱い(降格、減給、退職の強要、訓告、自宅待機命令、専ら雑務に従事させること、退職金の減額など)を行うことは禁止されています。また、公益通報者が派遣労働者の場合、当該公益通報を理由として労働者派遣契約を解除したり、派遣労働者の交代を求めたりすることはできません。
今回の改正では、事業者が公益通報者に対して、公益通報を行ったことを理由とする損害賠償請求ができないことが明記されました(改正法第7条)。

3.体制整備義務

今回の改正により、従業員数が301人以上の事業者は、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等を行うことが義務付けられました(改正法第11条)。具体的には、事業者において内部公益通報窓口を設置し、調査や是正措置を行う部署や責任者を定めておくことなどが求められます。従業員数が300人以下の事業者は努力義務となっています。
この体制整備義務の実効性確保のため、内閣総理大臣は、事業者に対して報告を求め、または助言、指導、勧告を行うことができ(改正法第15条)、勧告に従わない場合にはその旨を公表することができるようになります(改正法第16条)。また、報告の求めに応じなかった場合や虚偽の報告をした場合には、当該事業者は20万円以下の過料に処せられることになります(改正法第22条)。

4.守秘義務、刑事罰等の導入

今回の改正により、通報者が安心して通報を行えるようにするため、公益通報を受けて内部調査等に従事する者に対して、通報者を特定させる情報を漏らさないことが義務付けられました(改正法第12条)。同義務に違反した場合は、30万円以下の罰金に処せられます(改正法第21条)。

図2 公益通報者保護法の改正のポイント
出典:消費者庁「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)」


出典・引用

[1]消費者庁「公益通報ハンドブック―改正法(令和4年6月施行)準拠版」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/overview/assets/overview_220705_0001.pdf
[2]消費者庁「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/overview/assets/overview_200615_0001.pdf
[3]政府広報オンライン「通報者を守ります!公益通報者保護制度」
https://www.gov-online.go.jp/pr/media/radio/sc/text/20211205.html

監修:中本総合法律事務所




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