第7回羽倉賞(2023年)の
受賞記念講演会の様子をご紹介

最先端表現技術利用推進協会レポート

Vol.44

第7回羽倉賞受賞記念講演会レポート

日時:5月13日(月)13:30~17:00
会場:フォーラムエイト東京本社セミナールーム

2023年のデザインフェスティバルにて授賞式が行われた「第7回羽倉賞」受賞者の皆様に、それぞれ受賞された各作品の最先端技術についてご講演いただき、その後ネットワークパーティーも併せて開催しました。


講演会の様子

羽倉賞

「リアルタイム REXR (レクサー)~本人の細やかな表情も実時間で3Dアバターに高精細に再現~
   情報通信研究機構 (NICT)先進的リアリティ技術総合研究室

作品概要:

Webカメラ1台の2D映像だけからAIで本人のフォトリアルな3Dアバターを構築し、細やかな表情・動作もリアルタイムで3D化しアバターに高精細に再現可能なREXR(レクサー)技術を開発し、遠隔の3Dアバターと会話ができるライブデモを実施した。

講演レポート:

現状のオンライン会議では、全員が別々の枠の中で正面を向いていて、参加者の一体感・共感・親近感・信頼関係を形成することが困難です。将来はこのREXR技術を活用し、遠隔でも3D空間を共有し、実空間のようにお互いの顔を見合わせ、無意識に表出される微細な表情や動作も3Dで表現することで、互いの気持ち(心の機微)を自然に伝え合える遠隔コミュニケーションを実現したいと展望を述べられました。研究を始めるにあたり、スターウォーズのジェダイの会議みたいなものをつくりたいと説明したところ、共感を得られたというこぼれ話もお話しいただきました。

フォーラムエイトDKFORUM賞

「空海が見つけた見附島Ⅱ」
 空海が見つけた見附島実行委員会 /金沢工業大学 松林研究室

作品概要:

能登半島最先端の街、珠洲市の地方創生を目的に2020年の第一回に引き続き第二回として開催。テーマは、「アナログとデジタルの融合」とし空海伝説を背景に伝統芸能とプロジェクションアート、並びにドローンショーのシンクロイベントを日本で初めて実施した。

講演レポート:

松林研究室では地方創生に向けたイベントプロモーションを行っており、デジタル表現を用いたイベントの企画とその効果を図る研究を行っています。今回のイベントは伝説に基づいたストーリー性を重視し、空海上人が中国から持ち帰った三杵をテーマにしたそうです。プロジェクションマッピング、ドローンと伝統芸能の融合を届け、当初の想定を大きく上回る500名超の来場者を集めました。また、91%の参加者がPR効果を確認し、4万人以上に認知される結果となりました。2024年秋には、1月の震災復興を祈念し「空海が見つけた見附島Ⅲ」を開催予定です。

優秀賞

「Inkjet 4D Print:CGのモデルを現実世界で「折る」」
 東京大学 / Nature Architects株式会社 / エレファンテック株式会社 / 宮城大学

作品概要:

与えられた3Dメッシュから折紙のパターンを計算し、パターンを印刷したフィルムを加熱することで複雑な立体形状を自動で折る。これにより、CGの立体モデルを短時間・省材料・省スペースな2次元の折紙で実体化できるようになった。

講演レポート:

当日はご都合により、会場での参加がかないませんでしたが、動画での作品紹介と概要解説が行われました。鳴海紘也さんはこれまで、デジタルファブリケーション(コンピュータを使ったものづくり)を通じて「作り方を作る」ことに挑戦され続けて来ました。今回の研究では世界一細かい折り紙を実現し、どんなに複雑な形状でも70度のお湯をかけることで自己折りできる仕組みを作られました。デジタルファブリケーションのおかげで、いまや「設計できるもの=製造できるもの」になりつつあると述べ、最後は作りたいものを作れるものを作りましょう! と締めくくられました。

優秀賞

「インダイレクトビジョンによる潜在的映像の可視化技術」
千葉大学 久保尋之

作品概要:

インダイレクトビジョンと名付けた可視化技術の一環として同期式の光学計測システムを構築し、シーンの間接光成分を効率的に観測するシステムを考案し、皮下の血管や果実内部の構造など、直接目に見えない映像を非破壊で可視化することを可能とした。

講演レポート:

人の目で見える以上のものが見えるカメラを作りたいというモチベーションで研究をされてきました。従来のカメラは表面の色のみの計測をしてきましたが、これまでの研究を通じて光伝搬そのものを扱う重要性に気がついたといいます。無脂肪乳、低脂肪乳など同色の液体を、材質の透け具合から90%以上の精度で判別可能にし、目に見えない材質を光伝搬という情報から取り出すことに成功されました。現在は、悪天候下での自動運転などに応用可能な、特定の物体(標識、歩行者など)を鮮明化し計測する研究や、他には透明な水の動きを計測する研究もされているそうです。

奨励賞

「日本初の裸眼3Dディスプレイ研究開発スタートアップの起業」
 株式会社RealImage

作品概要:

高画質で大画面化可能な裸眼3Dディスプレイを開発し、日本初の裸眼3Dディスプレイベンチャーとして起業した。32型裸眼3Dディスプレイ等を商品ラインアップとして揃える一方、大きさや用途などの様々な要望に対応できるような技術供給体制を整えた。

講演レポート:

3D映像を日常の当たり前に! をモットーに、世界一美しい3Dディスプレイを提供されています。長年の経験から設計自由度の高いバリア方式裸眼3Dで高解像度を実現するべく様々な研究をされてきました。最近では、遅延なく裸眼ライブ3D映像を出力するシステムを研究されています。現在は組み込み型への対応や、大型の製品化、OLEDディスプレイへの対応、複数人対応、大型空中像など幅広い展開へ向け取り組みを行っているとのことです。今年のCEATECや来年のCESでは新たな技術が見られるかも…と今後の活動についてもお話しいただきました。

奨励賞

「筋電気刺激による身体同期を利用したアンサンブル演奏システム」
 理化学研究所 革新知能統合研究センター 音楽情報知能チーム

作品概要:

音楽的な理解に基づき作編曲された楽曲を筋電気刺激(EMS)に変換し、ステージ上のダンサーやミュージシャンなどの複数のパフォーマーの身体の動きを手指や足に装着したデバイスによって同期・制御し、アンサンブル演奏を達成した。

講演レポート:

人と音楽とその演奏体験について新しい可能性を見出したいというモチベーションからこのプロジェクトが始まったというお話からスタートしました。現在は、ギターやピアノの演奏にも挑戦しているものの、EMSの制御に苦戦しているそうです。また、演奏にとどまらず、バックスクリーンや照明などのあらゆるものをコントロールできる世界を目指して研究を続けられているとのことです。今後は、このシステムを利用し、暗闇演奏会やお客さんと一緒につくる演奏会、360度ステージアラウンドオーケストラなどに発展させていきたいと展望を述べられました。

奨励賞

「Floagent:見えないセンサーによる空中像インタラクティブシステム」
 電気通信大学 小泉研究室

作品概要:

体験者から視認不可能なセンサーにより実現される、空中像キャラクターと触れ合うことのできる仕組み。センサーを見えなくすることで装置や機械のような無機質な要素を隠消し、魔法のように浮かぶ映像の魅力を強調するデザインを提案。

講演レポート:

現実空間に映像を投影し、雨に濡れて泣いているキャラクターに対し、現実空間で実際に傘をさすことで映像の中では雨をはじき、それに合わせてキャラクターの表情も晴れるといった、映像に対し物理的にインタラクションが可能なシステムをご紹介いただきました。空中像(=人と映像が物理空間を共有する仕組み)を裸眼で体験できる装置を作っており、ユーザが一切の機材を意識することなく、空中像と物理的な交流を可能にする研究について詳しくご説明いただきました。教育向けコンテンツへの応用に向け、なにかアドバイスなどがあれば…と述べられました。


建設ICT          12月5日(木)

国土交通省が推進するi-Constructionをベースとして、IoTやスマートインフラ実現、情報化施工・維持管理など、当協会でも主体的に推進している3DVRの活用による効率化や高度化が大いに期待される「建設ICT」を対象分野とし、まちづくりにおけるハード面に相当する「計画・管理」、「設計・施工」に対応。

まちづくり         入門:9月10日(火)

「スーパーシティ」「自治体 DX」「Project PLATEAU(プラトー)」など、まちづくり・地域づくり分野におけるDXの取組み例を概観します。VR技術を活用したまちづくりを担う人材の育成を目的とし実施。

情報処理/データベース   9月18日(水)

情報に関する基本的な考え方から、最新の技術まで分かりやすく学ぶことができます。更に情報を収集、分析する手法としての統計の基礎について学び、Excelによる実習を行います。

クラウド-AI        7月5日(金)、12月17日(火)

クラウドや人工知能の知識を、いままで体系化して学習する機会がなかった方や、いちから学習したいと考える人を対象に、全体像を把握できるような検定講座を用意しました。とくに、建築・土木・交通・都市開発分野においては、メタバース・eb3・VR技術とクラウドやAIを連携するプロジェクト開発のために、どのような提案が可能であるかの習得を目標としています。

XR-メタバース NEW!    7月23日(火)

XRの各技術概要とこれらを使用したメタバース構築技術を学ぶとともに、実際のユースケースから活用の方法を習得できます。

(Up&Coming '24 盛夏号掲載)



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