終盤戦に向けてチャンピオンシップも佳境

若手カッレ・ロバンペラが通算5勝を挙げて選手権トップを維持

22年シーズン中盤戦はロバンペラ2勝、タナック2勝という展開に

2022年シーズンの世界ラリー選手権(WRC)は、8月の第9戦ベルギーまでを終え、依然としてTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR WRT)のカッレ・ロバンペラ(フィンランド)/ヨンネ・ハルットゥネン(フィンランド)がチャンピオンシップをリードしている。これまで同様、ドライバーズ、コ・ドライバーズ、そしてマニュファクチャラーズの3選手権でTGR WRTが抜きんでている状態に変わりはない。

前号でお伝えした第5戦以降の戦況を振り返っていくこととしよう。第6戦は、アフリカのケニアを舞台とするサファリ・ラリー・ケニア。昨年は2002年以来となるWRC復帰で大いに盛り上がり、今年は復帰後2回目の開催となる。首都ナイロビから北西に位置するナイバシャ湖の周辺エリアを戦いの舞台とするグラベル(未舗装路)ラリーだ。

トヨタの若手カッレ・ロバンペラ(左から2人目)が選手権をリードしている。

路面はラフでありクルマの耐久性が問われるほか、場所によっては“フェシュフェシュ”と呼ばれる細かなパウダー状の砂がスタックを誘い、ひとたび雨が降れば文字どおり泥の海がコースアウトに導くワナの多いラリーでもある。ここではロバンペラが競技2日目にトップに立つと、そのままポジションを譲ることなく最後まで走り切って勝利を得た。このラリーでは、トヨタのエルフィン・エバンスが2位、昨年このラリーで2位を獲得している勝田貴元が3位、セバスチャン・オジエが4位と、トヨタが1位から4位までを独占する結果となった。トヨタは1993年にもサファリラリーで1〜4位を独占しており、実に29年ぶりに快挙を再現するかたちとなった。

大自然の中を走るサファリラリー。場所によっては野生動物との遭遇も(写真左)。移動区間では地元の方々から熱い応援を受ける。

優勝後の記者会見でロバンペラは、「チームすべてのクルマが、この状況の中で大きなトラブルを出さなかったのは本当に素晴らしい。すごくタフなラリーだったので、走りながらどこかが壊れてもおかしくないと思ってしまうほどでした。チームのみんなは素晴らしい仕事をしてくれました。今回、このリザルトを収められたことの鍵は、そこにあると思います」と、チームをねぎらった。

ロバンペラの勢いは続く第7戦エストニアでも変わらない。エストニアはバルト3国の最も北側にあり、フィンランドとは海を挟んだ対岸に位置する。エストニア最古の街であり同国第2の都市タルトゥを拠点とするラリーは、スムーズな路面の未舗装路で争われる。路面のうねりはそのままジャンピングスポットとなり、選手たちはコ・ドライバーが読み上げるペースノート(コースの特徴や走り方を記したノート)にしたがって正確なドライビングで駆け抜ける。ラリーの序盤をリードしたのはトヨタのエバンスだが、2番手のロバンペラは競技2日目の後半に雨が降り始めたタイミングで一気にペースアップ。僚友エバンスをとらえて、ロバンペラは首位を奪うことに成功する。ひとたびトップに立った後は追いすがるライバルを寄せ付けることなく、シーズン5勝目を挙げている。2位にはエバンスが入り、トヨタが1-2フィニッシュを決めた。

「今回も素晴らしいリザルトを収められました」とロバンペラ。「金曜日の午前中は砂利掃除をしなくてはならず、エルフィンのペースについていくのは大変でしたが、その後からはいい戦いができるようになりました」とラリーを振り返っている。

サファリラリーで1993年以来となる1位〜4位独占を果たしたトヨタ。

フォードも毎戦4〜5台体制で参戦。開幕戦では勝利を挙げた。

高速ラリーのフィンランドと難関ベルギーでタナックが反攻の狼煙

第8戦の舞台はフィンランド。エストニアの対岸、スカンジナビア半島の付け根に位置し、森と湖の国とも呼ばれる。ラリー競技やモータースポーツが盛んであり、過去には何度もF1やWRCでチャンピオンを輩出している。ラリーの拠点となるのはフィンランド中部のユバスキラ。森林の中を縫うように走るグラベルロードは平均速度が高く、起伏に富んでいることからジャンピングスポットも多い。かつては“1000湖ラリー”とも呼ばれており、風光明媚な土地柄であることが伝わってくる。

ラリーは競技2日目にヒョンデのオィット・タナック(エストニア)が首位に立つ展開。トヨタ勢が追うものの、タナックも僅差で逃げ続ける。最終日を前にして、タナックと2番手ロバンペラの差はわずかに8.4秒。ふたりの対決に注目が集まったが、最終的には6.8秒差でタナックが逃げ切り、今シーズン2勝目を獲得した。母国エストニアでの敗戦から一転、ヒョンデに初のフィンランド勝利をもたらした。

「今回の戦いを心から楽しみましたし、特別な勝利だと思っています。ここは2017年以来、ずっとトヨタ勢が勝ってきたラリーです。だからヒョンデチームにとって重要な勝利であることは確か。実は優勝争いができるとはまったく思っていませんでしたが、とにかく攻めることに集中しました」と、タナックは振り返っている。

第9戦ベルギーは、4月の第3戦クロアチア以来となるターマック(舗装路)ラリー。拠点となるイープルは、ベルギー西部のフランス国境にほど近い古都。WRCとして開催されたのは昨年からだが、イープルを拠点とするラリーそのものの歴史は古く、1960年代から形を変えながら現在に至っている。

斜めにジャンピングスポットを駆け抜けるヒョンデ。
サスペンション性能の高さがうかがえる。

農道や集落の中の道路を組み合わせたコースが多いのが特徴で、道幅は狭く、直角や鋭角に曲がるコーナーも点在する。こうしたコーナーをクリアする際には路肩にまで踏み込むことが多くなるため、路面には砂利が掻き出されることになり、雨が降ればその量は倍増する難易度の高いラリーだ。さらにこのラリーを難しくしているのは、路肩の大きな“溝”である。クルマの落ち方が悪ければコースに復帰することはかなわず、今大会でも多くのドライバーが餌食となった。

ラリーは序盤から波乱に満ちた展開に。初日にはロバンペラが路肩の溝でクラッシュを喫し、2日目にはMスポーツ・フォードのクレイグ・ブリーン(アイルランド)と、首位に立っていたヒョンデのティエリー・ヌービル(ベルギー)が姿を消した。代わって首位に立ったのは、前戦フィンランドで勝利を挙げているタナック。タナックは最終日もリードを保ち続けて連勝を飾って見せた。

「こんなにいい結果が残せたのは素晴らしいことです」とタナック。「ラリーの間、常に完璧で快適な走り、という手応えは得られませんでしたが、どうにか色々なことをまとめることができました」と、笑顔を覗かせた。

トヨタチームの拠点があるフィンランドでは、大応援団が登場。

地元ドライバーが駆け抜ける時はよりいっそう応援にも力が入る。

いよいよシーズン終盤
勝田の成長に期待がかかる

シーズンは残すところあと4戦。荒れた路面の第10戦ギリシャ、久々のカレンダー復活となった第11戦ニュージーランドとグラベルラリーが続き、第12戦はスムーズなターマックのスペイン、そして最終戦として『フォーラムエイト・ラリージャパン』が開催される。

当初はロバンペラが圧倒するかと思われたシーズンだったが、ここに来てヒョンデ勢に巻き返しの兆しも見え隠れする。選手権は依然としてロバンペラが大きくリードしており、その優位は簡単には揺るがない。しかし、フィンランドとベルギーで連勝を挙げたタナックや、リタイアしてしまったものの、ベルギーでのラリーを一時リードしたヌービルの速さは特筆に値する。

また、この第9戦まで一貫して完走・ポイント獲得を続けている唯一のドライバー、勝田も大きく成長を遂げている。ベルギーでは初日にマシントラブルが発生したものの、粘り強く走り切って5位を得た。勝田は、そうしたラリーのなかでも手応えを得ていると語っている。

勝田貴元は今季ここまで全戦で完走、得点を重ねている唯一の選手。

競技の合間には他チームの選手とも談笑。親しみやすい人柄で選手たちからの信頼も厚い。

「これまでターマックラリーに対する自信を持ち切れていない感じがあったんですが、そうした点をラリージャパンに向けて克服していく、ターマックでのパフォーマンスを上げていく、という目標でベルギーには挑みました。
昨年と比べて一番大きく改善できたと感じている部分はブレーキです。昨年まではスムーズなブレーキングを心がけすぎてしまい、どうしてもブレーキングでタイムを失っている部分がありました。今年はそこが大きく改善され、ギリギリまでブレーキングできているという手応えがありました。その点は大きな進歩だ。
ベルギーとラリージャパンでは、コースのキャラクターがまったく違うのですが、ターマックのドライビングに対する理解は深まったので、今回の経験は間違いなくラリージャパンにも活かせると思っています」

勝田も言うように、各ラウンドごとに道の性格は様々。開催カレンダーのなかで、ターマックラリーは相対的に数が少ないため、実戦は貴重な機会といえる。その中できっちりと経験を積み重ね、日本ラウンドでは、そのスピードを披露してくれるはずだ。

僚友である、世界王者セバスチャン・オジエと意見を交わす勝田。チーム内の情報共有はオープンだ。

フォーラムエイト・ラリージャパン
観戦チケットは発売後即完売に

いよいよ目前に迫ってきた『フォーラムエイト・ラリージャパン』。北海道の札幌を拠点として行われた2010年以来の日本開催であり、新型コロナウイルス禍によって過去2年開催を断念してきただけに、今年の開催に向けて大いに期待が高まっている。スペシャルステージ(SS)の観戦チケットが発売後すぐに完売してしまったことからも、その期待度の高さがうかがえる。

SSの観戦チケットは完売してしまったものの、それでもラリーカーや選手を応援し、フォーラムエイト・ラリージャパンを満喫する方法はいくつかある。

現在入手可能なチケットは、サービスパーク入場券。スタート式典(セレモニアルスタート)が行われる11月10日から、フィニッシュを含む11月13日まで全日程が販売中だ。

ラリーの拠点となるサービスパークが設置されるのは、愛知県豊田市の豊田スタジアム。名古屋グランパスの本拠地であり、名鉄豊田市駅から徒歩約15分、愛知環状鉄道新豊田駅徒歩約17分というアクセスしやすい場所にある。開催期間中は各チームのラリーカー整備風景を楽しむことができるほか、10日(木)にはスタート、13日(日)はセレモニアルフィニッシュが執り行われる。

さらに、参加ドライバーがファン向けに行うトークショー『ミート・ザ・クルー』や、大型ビジョンにてライブ中継も行われる予定だという。

チケット価格は、1日あたり大人7500円、子供が3000円(3歳〜中学生以下。2歳以下は無料)。メカニックの整備風景や車両をじっくり眺めることができる。現時点でスケジュールは公開されていないものの、通常であれば金曜日と土曜日には、1日あたり3回程度の作業時間が設けられることが多い。購入についてはラリージャパンの公式ウェブサイトをチェックだ。

また、移動区間で選手たちを応援する方法もある。サーキットレースにはないラリーならではの特徴で、ひとつのSSを走り切ったラリーカーは、次のSSに向けて移動する際、公道を使って移動する。この移動区間はリエゾン(またはロードセクション)と呼ばれ、その国の交通法規を守りながら一般車とともに移動していく。移動ルートそのものは公表されていないが、岐阜県恵那市明智の『大正村浪漫亭前』、同じく恵那市岩村町の『岩村本通り枡形周辺』では、リエゾン応援イベントを実施する計画もあるという。

ただし、リエゾンでの応援に関しては、あくまでも一般公道であることは忘れてはならない。競技の妨げになるような行為はもちろんのこと、道の駅などでの長時間駐車や、周辺住民の迷惑になるような行為は、今後の開催にも大きな影響を及ぼす可能性がある。規則やマナーを守り、自身の安全も確保したうえで、選手たちを気持ちよく応援したいものだ。

2021年のセントラルラリー。岩村本通りには大勢のファンが集まり、選手たちに声援を送った。

(執筆:合同会社サンク)

(Up&Coming '22 秋の号掲載)



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