ピルビスワーク実践講座

連載 第16回


動けるからだを造るピルビスワーク
「神経にやさしい体の鍛え方」
~ストレスに振り回されない心と体を育てる~

一般社団法人 日本ピルビスワーク協会

立花 みどり

profile

立花みどり

一般社団法人日本ピルビスワーク協会特別顧問
1980年代のフィットネス全盛期、多くのエアロビクスインストラクターの育成と、ダンススタジオの委託運営を手掛けた、エクササイズの草分け的存在。その後、『ヒトのカラダは骨盤が支えている』という点に着目し、一般社団法人日本ピルビスワーク協会を設立。以降、骨盤ブームの第一人者として活躍している。40年間に渡る研究と研鑽を重ねた“立花メソッド”は、人々の健康に大きな影響を与える施術というのみならず、その思想、哲学に至るまで洗練された人生論、生き方論であり、ヒトの生き方は姿勢に現れるという信念のもと活動を続けている。フォーラムエイトの健康経営の一環として毎週水曜に開催されているピルビスワークストレッチプログラムの講師も務めている。

パソコンと向かい合うデスクワークが中心の現代人にとって、日々の運動習慣は健康維持に欠かせません。しかし、筋トレやストレッチだけでは、神経系にかかるストレスによって生じる「イライラ」や「気分の落ち込み」などの不調までは十分に回避できないことがあります。特に長時間の座り姿勢や、脳だけを使い続けるライフスタイルでは、神経系の緊張状態が長引き、自律神経のバランスが乱れやすくなるのです。

神経系のストレスに強くなるための体の鍛え方は、ただ筋肉をつけるだけでは無く、心と体がストレスに振り回されにくくなる「しなやかな反応力」と「深い落ち着き」を育てることが大切です。

現代人は、情報の多さや対人関係、忙しい日常の中で、知らず知らずのうちに神経系が緊張しっぱなしになりがちです。何より運動不足が災いして自律神経のバランスが乱れ、呼吸が浅くなったり、疲れやすくなったり、感情の起伏が激しくなったりしています。

そんな毎日の中でも、自分の内側から整えることは可能です。今回は、神経系を整えながらストレスに強くなるための5つの基本アプローチと、毎日たった5分でできる実践メニューをご紹介します。動画を見て取り入れられそうな動きから実践してみましょう。

STEP1

呼吸を整えることで、神経を落ち着かせる

自律神経を安定させるためには、呼吸を「整えること」がとても大切ですが、神経系ストレスを感じている方には、胸椎や肋骨を柔軟に動かす「胸式呼吸」をオススメします。

呼吸がラクになる胸式呼吸

1 胸をふくらませながら、肩甲骨の間に位置する胸椎を反らせてゆっくり吸い、細く長く吐く

2 吸うより吐く時間を長くする(例:吸う4秒・吐く8秒)

★ 吐く時に口を閉じてハミング(鼻歌のように声を出す)も効果的。胸椎を動かす呼吸は、のどや胸の緊張をほどき、気持ちの安定にもつながります。

STEP2

姿勢や骨格を整える動きで、体の土台を安定させる

姿勢のバランスが崩れると、神経系の安定も難しくなります。骨盤や背骨をしなやかに動かすことで、神経の通り道が整い、自然と気分も落ち着いていきます。骨盤と背骨をやさしく動かす運動は仙骨から後頭骨までの連動を意識して行います。その時足裏で床を押す感覚を感じながら行うと重力を感じる力を高めます。

背骨のゆらぎ運動

1 イスに座り、骨盤を前後にゆっくり揺らす(10回)

★ 背骨の波を感じながら呼吸と連動させ、足裏で床を押す力を意識しながら行う

2 両手を頭に回し、息を吸いながら肘を開き、息を吐きながら肘を閉じる(10回)

STEP3

やさしい刺激で神経を整える

神経系は、心地よい感覚への刺激によって回復のスイッチが入ります。感覚を刺激するためには、骨に伝わる微細な振動(骨振動ケア)や皮膚への軽いタッチ、手のひらで包み込む感覚や関節を回すリズム運動が最適です。これらは神経に「安心感」を伝える優れた方法です。

ジグリング

1 イスに座ったままかかとを軽く床にトントン落とす。いわゆる貧乏ゆすりの動きで骨に振動を加える

2 膝を揃えて左右にゆさゆさ小さく揺らし、慣れてきたら頭も一緒に揺れるように動かす

STEP4

体の反応力を高める遊びのような動き

不測の事態にも過剰に反応せず、落ち着いて対応する力を養うには、軽いリズム運動や上下が交差する動作が効果的です。特に左右の手足を交互に使う動きや不安定な床の上でバランス保持する動き、リズムに乗った全身の運動が神経の“しなやかさ”を育てます。

頭をスッキリさせるクロス運動

1 右手で左ひざ、左手で右ひざを交互にタッチ(20回)

2 両手を上げる⇒右手で左の内くるぶしタッチ⇒両手を上げる⇒左手で右の内くるぶしタッチ(10回)

STEP5

朝はさわやかに「ととのえる時間」をつくる

朝目が覚めたら、まず両手、両足を思いっきり伸ばして眠っていた関節筋肉肌を目覚めさせましょう。次に、両膝を両腕で抱え込み丸まる姿勢を作ると仙骨から頭蓋骨まで骨の自然なカーブが整い、背骨が優しく引き延ばされます。前後左右に小さく揺れる動きは、脳幹に響く優しい刺激となり、神経や感覚がふわりと目覚めて行きます。

目覚めのストレッチ

1 両手、両足を思いっきり伸ばす

2 両膝を両腕で抱えて丸くなり、前後左右に小さく揺れる

3 うつ伏せになり、背骨を反るストレッチ、丸まるストレッチを行い、腰~背中、脇を良く
伸ばす

(Up&Coming '25 盛夏号掲載)



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