本連載は、「システム開発」をテーマとしたコーナーです。フォーラムエイトのシステム開発の実績にもとづいて、毎回さまざまなトピックを紹介していきます。
今回は、完全自動運転時代に向けた「交通標準プラットフォーム」の提案とその応用例についてご紹介します。

国土強靱化に資する、FORUM8流「デジタルツイン・ロボティクス」への挑戦
VRシミュレーションとFEM解析の融合が、ロボットを「現場の守り手」へと進化させる

はじめに:なぜ今、ソフトウェア企業がロボット開発を行うのか

FORUM8はこれまで、3D・VRソフト「UC-win/Road」やFEM解析ソフトウェア「Engineer's Studio®」などを通じ、サイバー空間上での国土強靱化支援を行ってきました。しかし、激甚化する災害やインフラ老朽化、そして建設業界の人手不足といった「現場の危機」に立ち向かうには、シミュレーションの世界だけでは完結できません。

そこで我々は、次世代ヒューマノイドロボット「Unitree G1」とロボット制御基盤「ROS2」を導入し 、新たなフェーズへ踏み出します。それは単なる案内ロボットの開発ではなく、「FORUM8のソフトウェア技術(脳)を、ロボットというハードウェア(身体)に実装する」という挑戦です。


コンセプト:Software-Defined Robotics(ソフトウェア定義型ロボット)

従来のロボット開発はハードウェアの性能に依存しがちでした。しかしFORUM8のアプローチは異なります。我々の強みである「シミュレーション」「FEM解析」「クラウド」を中核に据え、「解析するために動く」「シミュレーション通りに動く」ロボットシステムを構築します。

1. 【平時の強靱化】 「見る」だけでなく「診る」点検ロボットへ

従来の点検ロボットは、カメラで撮影し、データを持ち帰って人間が確認する「記録係」に過ぎませんでした。FORUM8が目指すのは、ロボットと構造解析ソフトのリアルタイム連携です。

リアルタイムFEM診断
橋梁やトンネルの点検において 、ロボットが取得したクラック(ひび割れ)や変位のデータを、即座にクラウド上の解析エンジンへ送信。

余寿命の可視化
その場で「今の損傷が構造的に危険かどうか」を自動判定し、デジタルツイン上で可視化します。これにより、ロボットは単なる撮影機材から、熟練技術者の判断能力を持つ「自律診断端末」へと進化します。

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2. 【有事の強靱化】 「失敗しない」ためのVR事前シミュレーション

災害現場や崩落危険箇所など、人が立ち入れないエリアでのロボット活用 には、「スタック(立ち往生)」のリスクがつきまといます。ここで活きるのが、FORUM8のVR技術「UC-win/Road」です。

  • 極限環境の再現: 瓦礫、泥濘、浸水などの過酷な環境をVR空間内に高精度に再現。
  • AIの強化学習: 仮想空間内でロボット(ROS2制御)の歩行シミュレーションを何万回も繰り返し、「転倒しない」「止まらない」制御ロジックを学習させます。

実機を動かす前にバーチャルで徹底的に鍛え上げることで、予測不能な災害現場でも確実にミッションを遂行できるロボットを実現します。

「G1 × ROS2」による身体性の拡張

今回導入するUnitree G1は、人と同じ環境で作業できる優れた身体性を持っています 。このハードウェアをROS2上で制御することで、FORUM8の各種ソフトウェア(VR、解析、クラウド)とシームレスに接続することが可能になりました。

これまでPepper等の運用で培った「人との適切な距離感」や「運用ノウハウ」 は、現場作業員と協働する際の安全管理やインターフェース設計へと昇華させ、無機質な機械ではなく「頼れるパートナー」としてのロボットを構築します。

結び:サイバーとフィジカルを繋ぐ、国土強靱化の新たな一手

我々が提供するのは、単体のロボットではありません。「現場のデータをロボットが集め、ソフトウェアが解析し、再び現場の保全に活かす」という、サイバーとフィジカルの循環(ループ)そのものです。

FORUM8は、ソフトウェア企業としての圧倒的な技術資産を武器に、日本のインフラを守り抜く「実効性のあるロボティクス・ソリューション」を提案してまいります。これからの展開にぜひご期待ください。

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(Up&Coming '26 新年号掲載)



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