連載 【第29回】
ビタミンCがなぜ体にいいのか

profile
関西医科大学卒業、京都大学大学院博士課程修了。マウントシナイ医科大学留学。東京慈恵会医科大学助手、帯津三敬塾クリ
ニック院長を経て現在、ピュシス統合医療クリニック院長。公益財団法人未来工学研究所研究参与、統合医療 アール研究所所長。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本心療内科学会登録指導医、日本心身医学会専門医、日本森田療法学会認定医。日本医師会認定産業医。日本統合医療学会業務執行理事・認定医。日本メディカルホメオパシー学会専務理事・専門医。Institute for Mindfulness-Based Approaches認定MBSR講師。全米ヨガアライアンス認定RYT500。『妊娠力心と体の8つの習慣』監訳。『花粉症にはホメオパシーがいい』『がんという病と生きる森田療法による不安からの回復』共著。『1分で眠れる4-7-8呼吸』監修など多数。


 「ビタミンCをもっと摂ろう」と聞いて、なぜビタミンCが身体にいいのか、どうして今注目されているのか、「ファシア」とビタミンCとの関連から考えてみました。


栄養素のひとつであるビタミンC

体内での栄養(代謝)のために外界から摂取される要素が栄養素です。私たちは食べ物から栄養素を取り入れています。取り入れた栄養素は、消化・吸収によって体内で分解や合成され、エネルギーを生成し身体をつくり、身体を調節しています。食物の7大栄養素の一つがビタミンです。ビタミンは糖質、脂質、タンパク質などの代謝において潤滑油的な働きがあり13種類あります(図1)。ビタミンには水に溶けやすく熱に弱い、蓄積しない水溶性ビタミンと油と一緒に摂ることで吸収されやすい、肝臓や脂肪組織に貯蔵される脂溶性ビタミンがあります。脂溶性ビタミンは肝臓に蓄積されるのでサプリメントで大量にとると過剰症を引き起こす可能性があります。ビタミンCは水溶性ビタミンです。1753年に英国海軍医師リンドによって、壊血病予防因子として発見されました。一般名はL-アスコルビン酸といいます。ビタミンCは、消化管から吸収されて速やかに血中に送られます。食品やサプリメントで摂取した時の吸収率 は200mg/日程度までは90%、1g/日以上になると50%以下となりますが、1日2g摂取すると1gぐらいは吸収されます。健康な人がビタミンCを過剰摂取しても消化管からの吸収率が低下し、尿中排泄量が増加することから、安全と考えられています。一方胃腸の弱い人などでは、過剰摂取(例えば1日3~4g)することで、吐き気、下痢、 腹痛などを起こすことがあります。

最近では、ビタミンCを効率的に体内に取り込むのを目的としたナノマテリアル製品であるリポソームビタミンCのサプリメントが人気を集めています。リン脂質で構成された超微小カプセルで、ビタミンCを包み込むことで体内吸収率を高めます。ただナノマテリアル製品は、代謝を受けないことが多く、体内への蓄積性が高い可能性があります。また高度な最新技術により高価なサプリメントになっています。

図1 参考文献:五訂増補食品成分表2010(女子栄養大学出版部)
 

ビタミンCの機能

ビタミンCの働きは、コラーゲンの生成に関与して皮膚・骨・血管が弱くなるのを抑え、副腎をストレスから防御し、メラニン色素の生成を抑えるなど多様です。重要なことは抗酸化物質であること、また「ファシア」生成に欠かせないビタミンであることです。抗酸化物質として、神経系を保護し、酸化ストレス(生体の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れ、酸化状態に傾き、生体が酸化的障害を起こすこと)を低減させ、中枢神経系の酸化還元バランスを維持します。またDNAの酸化損傷を減少させ、DNA修復タンパク質に作用することで、放射線保護特性を持つことが示唆されています。このことからビタミンCの補給により、がんそのものには直接的な治療効果がありませんが、化学療法や放射線療法の副作用を軽減し、QOLを向上させると考えられています。

ビタミンCとファシア

「ファシア」は全身の臓器を被い、接続し、情報電伝達を担う繊維性の立体網目状の組織のことです。図2に示すように、ファシアは皮膚と筋肉の間や、各臓器の連携、またミクロでは細胞ひとつひとつの間隙を埋める細胞外マトリックスなどを含んでいます。ファシアの成分は骨や皮膚の成分でもあるたんぱく質のコラーゲンです。このコラーゲン生成にはビタミンCが必要です。ファシア内には水分、多くの細胞成分が存在し、線維芽細胞や免疫細胞が組織の修復や炎症反応に関わっています。特にファシア内の水分は、組織の滑走性を高め、栄養素や老廃物の運搬を助ける重要な役割を果たしています。

体内での酸化ストレスが原因でファシアの酸化が起こります。酸化することでファシアが硬化し、柔軟性が低下していきます。ファシアが硬くなると、周囲の組織や神経に圧力がかかり、痛みが増すことにつながります。特に腰痛や肩こりの原因の一つとしてこのファシアの硬化が考えられています。また酸化ストレスは炎症とも関係し、さらに炎症が悪化し、ファシアの線維化につながります。酸化によるファシアの変化が神経に影響を与え、しびれやピリピリとした異常感覚が生じることがあります。これらの症状を軽減するためにもビタミンCの摂取が重要になってきます。

図2 日本整形内科学研究会のHpより引用

 




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(Up&Coming '25 春の号掲載)
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