3D・CGコンテンツ事業を展開するゲーム開発グループによる本連載では、
同社のゲームコンテンツ関連技術とUC-win/RoadのVR技術とのコラボレーションによる新たな展開から、
クリエイター陣による企画・制作のノウハウまで、様々な内容を紹介していきます。

スイート千⿃エンジン®開発状況

サウンド機能強化(サウンド⽣成AIとの連携)

現在、スイート千⿃エンジン®にてサウンド機能強化、特にサウンド⽣成AIとの連携を進めています。サウンド⽣成AIは、機械学習アルゴリズムを使⽤して、⾳楽、⾳声、効果⾳、環境⾳などの新しい⾳声コンテンツを⾃動的に作成・合成するテクノロジーです。サウンドAIとして、Suno AI、Udio等が有名です。

現在のゲーム開発では、BGMや効果⾳を⾃前で制作する、あるいは既存のライブラリから選択して利⽤することが⼀般的です。近年では、⽣成AIによる⾳声や⾳楽を活⽤することも可能になってきました。そこで、スイート千⿃エンジン®ではサウンド⽣成AIとのAPI連携を導⼊し、「シーンやキャラクターの感情・表情に応じてリアルタイムに⾳楽を⽣成する機能」の搭載を検討しています。この機能により、ゲーム内の状況に合わせて⾳楽を即時に切り替えたり、変化させたりできる、より柔軟なサウンド演出が実現します。

具体的には表1のような機能の導⼊を検討しています。

機能 内容 技術要素
AI API 接続 生成AI音声合成サービスへHTTP/REST 呼び出し C++ ライブラリ / JSONでパラメータ送信
シーン・キャラクター情報取得 エンジン内部でイベントや状態を監視 イベントハンドラ + 状態管理クラス
生成指示生成 シーン / 感情 → 音楽スタイル(テンポ、キー、ジャンル)マッピング C++実装 / JSON指定
拡張再生 様々な形式を読みこめるように拡張したサウンド機能 C++ ライブラリ
キャッシュ機能 同一指示に対しては生成済み音楽をキャッシュ LRUキャッシュ、ファイルシステム

表1 機能概要表


設定⽅法はC++上での設定、もしくはJSONへ以下のように設定を⾏います。キャラクターの表情、atmosphereへシーン全体の雰囲気、簡単な概要を記述することでシーンに合った曲を⾃動⽣成します。music_styleとしてシーン毎の詳細な設定も可能です。


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図1 JSON指定例

サウンド⽣成AIとの連携機能は以下のような順序で動作を⾏います。

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図2 サウンド⽣成AIとの連携機能の動作⼿順

また、従来のゲーム制作環境との⽐較を簡単にまとめたものが以下の表2となります。

項目 従来の課題 AI 統合後
柔軟性 決められたBGM シーン・感情に応じて即座に変化
作業効率 音楽制作+編集時間が必要 生成指示だけで音楽を自動生成
ユーザ体験 同質のBGMが多い 個別の演出で没入感向上
保守性 バージョン管理・リソース増大 必要時にのみ AI 呼び出し、キャッシュで再利用(ファイルへ保存可)

表2 従来のゲーム制作環境との⽐較表


従来は⾳を制作、依頼し完成したデータを埋め込み特定のシーンで利⽤するためのインデックス付与等、ミドルウェアで軽減されても時間と労⼒がかかるものでした。しかし、この機能を使⽤することにより、より簡単に、より素早くゲームの制作を⾏えるようになります。

現在はWAV(PCM44,100Hz,16bit,Stereo)とOGG(Vorbis Codec)に対応しておりますが、FLAC(192,000Hz,24bit Stereo)等のコーデックにも対応できるよう機能拡張を進めております。また、リサンプリングの有効、無効化の切り替えを⼿動で⾏えるようにも現在開発を進めております。

今回は、開発中のサウンド⽣成AIとの連携を通じてリアルタイムで感情や表情に合わせた⾳楽を⾃動⽣成できるようになる機能をご紹介しました。この機能はC++/JSON形式で簡単に指⽰できるため、開発者の負担が⼤幅に軽減されることが期待されます。スイート千⿃エンジン®の今後のアップデートにご期待ください。

(Up&Coming '26 新年号掲載)



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