Users Report

ユーザー紹介/第144回

櫻井工業株式会社

設計業務でのコミュニケーション円滑化ニーズから全社的な取り組みへ

F8VPSをベースに独自のバーチャルオフィス「Sakurai Collabo」を構築

櫻井工業株式会社

URLhttps://www.skk-gr.co.jp/

所在地東京都江東区

業務内容
空調衛生設備、消火設備、プラント(リニューアルを含む)の設計施工

創業者の櫻井信平氏が、柴又帝釈天を御参りした際に水鉢を掲げている子供の像を見たことをきっかけに、水に関わる事業で社会貢献することを決意。そのような思いから会社が始まった。

CSRやSDGsへの取り組みの一環として、地域とのかかわりを大切にしている。富岡八幡宮例大祭に地域の企業として参加し、祭り用に駐車場も提供。

社員の皆さん

駐車場を提供

取締役 営業本部長 笠島 久幸 氏

執行役員 管理本部長 小川 達則 氏

執行役員 東京支店長 髙栁 光一 氏

櫻井工業株式会社では、コロナ禍以前より設計部において、本社・支店間、あるいは遠隔地にある現場や顧客との間でいかにコミュニケーションを円滑化するかといった課題が浮上していました。そのソリューション対策のパートナーとしてフォーラムエイトにお声がけいただき、その後のバーチャルオフィスに通じる機能創出を共に模索する取り組みが始まった経緯があります。

「若い社員らを中心にしっかり入力するし、ゲーム感覚でアバターも活用するなど楽しみながら対応しており、導入してみて良かったのではと思っています」

正直なところ、当初はその必要性に多少懐疑的な面もあったと明かす同社の笠島久幸・取締役営業本部長。新型コロナ禍を経て、結果的にはリモートワークからくる孤独感の問題や従業員の体調管理、電話ベースのコミュニケーション上の制約など、次第に顕在化してきた様々な懸案に対するバーチャルオフィスのメリットを実感している、と振り返ります。

また、2020年には同社にスマートワークプロジェクト(SWPJ)が設置され、一部署から始まったその試みは全社を巻き込む奔流へと拡大。併せて、コロナ下の建設・設備業として、従業員の体調管理をどう図っていくかといった新たな課題も取り込み、整理。その間、並行して開発されていたFORUM8バーチャルプラットフォームシステム「F8VPS」とも連携し、同社独自の機能を有する「Sakurai Collabo(サクライ・コラボ)」を構築。SWPJが発展的に解散し、以降は「ICT推進室」がその運用主体となり、他の同社既存システムとの機能統合など新たなフェーズのバーチャルオフィスを目指す動きへと進化を続けてきている、と髙栁光一・執行役員東京支店長は語ります。

今回ご紹介するユーザーは、タワーマンションを始めとする建築設備工事で豊富な実績を誇る櫻井工業株式会社です。同社は設計部を通じ早くから構造計算などに関わる当社の各種ソフトウェアを利用。そうした繋がりもあり、コロナ禍前に遡る一連のバーチャルオフィス開発に向けた取り組みで連携。2020年後半からはF8VPSをベースとする「Sakurai Collabo」の構築・機能改善に努めてきています。

東日本を中心に80年超にわたり建築設備の設計・施工で実績

櫻井工業株式会社は1938年、マコト屋櫻井工務所として創業。1944年には法人化し、株式会社櫻井工務所として設立しました。水との関わりにインスピレーションを得たと伝わる創業者の思いを反映し、同社は80年超にわたり建築設備に関わる事業を東日本を中心に展開。この間、業容拡大とともに組織の再編・拡充を重ねる中で、1965年には現行社名に改称しています。

同社は現在、管理、コスト管理、工事、プロジェクト推進および営業の5本部より構成。札幌支店、仙台支店、東京支店、リニューアル事業部、東海支店、名古屋支店、大阪支店の6支店1事業部、千葉、埼玉および神奈川の3サテライトオフィスなどを設置。それらに244名の従業員を配置しています(数字は2023年5月現在)。

こうした体制の下、同社ではタワーマンションなどの集合住宅から非住宅建築物、消火設備、プラントにわたる、新築およびリニューアルの設計施工で着実に実績を伸張してきています。

社員はSakurai Collaboに入室すると、現在の体調について記入する画面が表示される。そうすることで一人一人が体調管理を行うことができ、管理者は管理者画面から社員の様子を把握し、業務調整等を行うことができる。
Sakurai Collabo入室後、現在の体調について記入(上)
顔アイコンをクリックで、個人の体調を確認(下)

管理者は管理者画面から社員の様子を把握

コロナ禍を機に加速するバーチャルオフィスへのシフト

「最初は、設計部内で配下社員が在席か、外出(遠隔地の現場あるいは顧客先)か、あるいは在宅勤務かを管理できないか、ということで始まりました」。そうしたニーズへの対応が試みられていた中で、2020年1月に国内初の感染者が確認されるなど日本も新型コロナ禍に見舞われることとなり、当初着想された意味合いは一変。ICT(情報通信技術)活用を促す社会的な流れもあり、後のバーチャルオフィスを指向する取り組みが動き始めた、と小川達則・執行役員管理本部長は語ります。

設計部ではコロナ禍前から業務上、従業員の所在状況をその都度、電話で確認するのではなく、Webで把握するとともにビデオ会議も行いたいというニーズが醸成。部内で新しいコミュニケーションの方法を模索していた2019年頃、当時の部長が構造計算などのソフトで馴染みのあったフォーラムエイトにそうした機能を開発できないか、と相談するに至りました。

「その頃は、関係者が集合し対面で会議を行うのが通常で、健康管理も一般的な健康診断などに留まっており、日々の健康を細かくチェックする体制にはありませんでした」(笠島取締役)

それが新型コロナ禍を機に、本社・支店間や現場などとのコミュニケーションをいかに円滑化するか、体調管理も含め従業員の管理をどう行っていくかは、全社的に取り組むべき課題へと昇華。2020年には、冒頭で触れたSWPJが設置され、コロナ禍にあってコロナ感染の有無はもちろん、メンタル面を含む従業員個々の健康の一元管理にも対応するバーチャルオフィスを導入する方針が決定。同年後半には、これらの機能を実現するシステムをフォーラムエイトが構築しています。

またちょうどその頃、フォーラムエイトが並行してF8VPSの開発を進めていたこともあり、納品した2Dのバーチャルオフィスとの連携による3D・VR空間(メタバース)とアバターを利用したコミュニケーションなど、更なる拡張機能の可能性を提案。これを受け、将来的に同社の各種既存システムとの重複を極力排除しつつ、ウェビナー(オンラインセミナー)などの機能を新たに追加して合流を目指そうとの構想が描かれた、とSWPJ発足から一貫してバーチャルオフィスの開発に関わってきた髙栁支店長は振り返ります。

既存基幹システムとF8VPSの機能が連携するSakurai Collabo

SWPJは2022年、2年間にわたる活動を終え発展的に解散。代わってプロジェクト推進本部に設置されたICT推進室が、F8VPSをベースに同社のニーズを反映して構築した独自のバーチャルオフィス「Sakurai Collabo」の運用を担ってきています。

当初、同社では既に活用していた基幹業務システムにより、請求書や勤怠・給与管理などをすべてペーパーレス化。これに、F8VPSが有するコミュニケーション・ツールを始めとする各種バーチャルオフィス機能が連携。技術会社としていつでも・どこでも・誰とでも必要な情報交換や知識共有が可能な、業務効率化を駆動する環境を整備し、現在の「Sakurai Collabo」となっています。一方、重複する機能の調整や作業に要するクリック数削減を進め、最終的には全社員のポータルとして確立していきたい考え(髙栁支店長)といいます。

そこで、Sakurai Collaboのオープニング画面ではまず、既存基幹システムと連携しタイムカードを打刻できるよう設定。これにより社員一人ひとりが自身の出勤・退勤状況や累積残業時間の確認が可能。「建設業の2024年問題」として知られ4月から法規制が実施される「残業上限規制」にも備える仕組みを考慮しています。

続いて体調入力の画面で良好、絶好調、あるいは不調などの項目を選ぶと、それらに応じてアイコンの表情が変化。体温や脈拍、血圧(上下)などの入力欄、細かな症状についてフリーワードで記述できるコメント欄などを設け、メンタル面を含む日々の体調を確認できるよう意図。出退勤や体調関連の入力を忘れている社員には、毎日定時に当該社員宛てメールで告知する機能も備えています。

また、管理職らが配下社員の出退勤や体調に関する情報を一覧表示できる管理職モードも用意。必要に応じ随時確認することが可能です。

加えて、バーチャルオフィスの画面ではまず、2Dもしくは3Dのモードを選択。例えば2Dの画面では、本店・支店の全社員が所属するオフィスやフロア、部署ごとに一人ひとりのアバターで在席か離席かを表示。設定によっては休憩中もしくは外出中の枠にアバターが移動。そのため、全社員の所在をリアルタイムに確認できます。また会議室の枠に自身のアバターを入れ、会議に参加して欲しい別の社員のアバターを同じ枠に入れるとビデオ会議やチャット機能がスタートします。

さらに3Dの画面では、それらが立体的に表示されるとともに、各地の天候や暑さ指数(WBGT)などの情報も反映されます。

Sakurai Collaboでは日々の運用を通じ、ICT推進室と笠島取締役を中心に、社内の要望を反映した機能の追加や重複の解消、ユーザーインターフェース(UI)など使い勝手の改善を試行錯誤しつつ図る体制が取られている、と髙栁支店長は説明します。

2D、3Dでの移動、フロア選択が可能。バーチャルオフィスのほかに、現場や外出、休憩室などの空間を作成することで、全社員の居場所をリアルタイムで視覚的に把握することができる。

Web会議機能では、会議室にアバターを入れると会議がスタート。ビデオ通話、画面共有、チャット機能、ホワイトボードの表示などコミュニケーションツールが充実。個人間だけでなくグループでのコミュニケーションが可能。

バーチャルオフィス内で現場の天候や暑さ指数を確認

Sakurai Collaboの機能改善・強化へ

基本的には「Sakurai Collabo」を軸とし、その中で使い勝手の良くない機能があれば社内ニーズに即して様々な改善を継続的に図っていく。笠島取締役は今後のスタンスをこう描くとともに、そこでの、難題に対し常に積極的にフォローするフォーラムエイトへの期待を述べます。

これに関連し、小川本部長は業務効率化・生産性向上へと会社全体の意識が変わってきているところが大きい、と位置づけ。そのような中で、Sakurai Collaboを全従業員がスタート画面として用い、そこから各種の入力作業を行いつつ、コミュニケーション・ツールとして高頻度で利用することを踏まえ、クリック数削減の必要性にも言及します。

「仮想空間をいろいろなことに活用し、そこで物事が行われる流れはもっと進んでいくのだろうと思います」。特に社員第一主義を掲げる同社管理部門の観点から、小川氏は省力化とともに従業員の健康を支える機能強化に力を入れていく考えを示します。

一方、髙栁支店長はSakurai Collaboのコミュニケーション・ツールとしての機能もさることながら、ショールームや展示会、ウェビナーなどによる可能性の広がりに注目。併せて、これまでの同システム構築を通じて得た、他社ソフトとの連携や機能のカスタマイズにおける当社対応の柔軟さへの実感にも触れます。


左から髙栁 光一 氏、笠島 久幸 氏、小川 達則 氏、ICT推進室にて実働部隊を担う丸山 隆司 氏

執筆:池野隆
(Up&Coming '24 新年号掲載)