Academy Users Report
アカデミーユーザー紹介/第37回

摂南大学 経営学部 経営学科
塚田研究室

Department of Management, Setsunan University

ゼミの学年混合チームによる課題解決型学習でメタバースプロジェクトを展開
産学連携の共同研究においてもインフラ維持管理におけるF8VPSの活用を模索


摂南大学 経営学部 経営学科 塚田研究室
URL https://www.setsunan.ac.jp/
所在地 大阪府寝屋川市
研究内容:AI等の情報技術活用による社会課題・企業課題解決に向けたビジネスプランやソリューション創出





摂南大学 経営学部 経営学科
塚田研究室 塚田 義典 准教授

「AIやメタバースなどの情報技術を上手に使って、社会課題や企業課題を解決するためのビジネスプランを形にすること。そういったものを考えていくというのが、塚田研究室のゼミに所属する学生たちのメインテーマです」。摂南大学経営学部の塚田義典准教授は、2019年の着任以来、同大学の文系学部のゼミとしては異色ともいえるこのような取り組みを続けています。

同氏は、関西大学の学部生として在籍中に、所属していた総合情報学部 田中成典教授の研究室が母体となって設立された学生ベンチャー企業である株式会社関西総合情報研究所(KII)に入社(2009年)。知能情報学(AI:人工知能)、知覚情報処理(コンピュータビジョン、画像処理)、社会基盤情報学を専門分野として、同大学大学院で博士号を取得し、関西大学先端科学技術推進機構 特任助教(2015年)、岩手県立大学ソフトウェア情報学部 講師(2016年)を歴任したのち、現在に至ります。

「博士論文での対象は、分野的には土木情報学に該当しています。3次元的なデータの取扱いを継続的なテーマとして、具体的には、レーザスキャナやカメラの画像を使って起こした橋梁・道路などの3次元データを活用し、どのようにメンテナンスに生かしていくかなどを研究していました」という塚田氏。前述の関西総合情報研究所において、Web技術を利用したアプリケーションの開発・コンポーネント開発、高度な画像処理技術と写真測量技術を駆使した様々な計測システム、CAD/GIS技術の応用などに携わっており、こうした民間企業での豊富なビジネス経験を、ゼミでのプロジェクトにも生かしています。



メタバースを活用してビジネスアイデアを形に

摂南大学の学生は2年生という早期からゼミに配属となり、それぞれの専攻分野を深めながら実践的なプロジェクトに参加します。45名の学生が所属する塚田研究室のゼミは、2年生から4年生までの学年混合プロジェクトチームによるPBL(Project Based Learning:問題解決型学習、課題解決型学習)に取り組んでおり、「AI就労支援」「メタバース」「スマートキッチン」「視線計測」「人流解析」「道路点検」のプロジェクトチームに分かれて活動。各チームに地方公共団体や民間企業を割り当てることで現場ニーズに即した活動を展開すること、また、年間スケジュールが決まればプロジェクトの進行は学生主導で行うことなど、実践的で主体的な学びを特長としています。

様々なアイデアを形にする上で、3次元データの活用は欠かせないという塚田氏。「メタバース」のプロジェクトでは、フォーラムエイトのWebVRプラットフォームシステム「F8VPS」を導入し、イベントの集客や企業の課題解決などにつなげていく実際の活用方法を模索しています。

「彼らは文系ですので、アイデアを実現する過程での高度なシステム開発などの理系的な知識・技術については、私自身の恩師である関西大学総合情報学部 田中成典教授のゼミ生からも協力を得ながら、両大学共同でプロジェクトを進めています」。

塚田氏は、田中研究室に所属していた際に3次元リアルタイムシミュレーションソフトUC-win/Roadに触れ、3次元情報の可視化におけるその有用性を既に実感。そして近年、メタバースが社会的に注目を集め始めていたところ、田中教授より、メタバースを構築できるWebVRプラットフォームシステム「F8VPS」と、メタバースの空間モデリングに活用できる統合型CGソフトShade3Dを紹介され、プロジェクトでの活用を視野に入れての導入に至ったといいます。


ゼミ生(4年生:12名、3年生:18名、2年生:15名)。早期からのゼミ参加により、専門分野に関して実践的なプロジェクトに関わることができる


人事・採用、デジタルアーカイブ、就労支援など多様な目的で展開

塚田研究室ゼミのメタバースプロジェクトチームでは、複数の企画が並行して進められています。その中のひとつ「メタバース人事」では、建設コンサルタント会社である株式会社日本インシークとの協力により、企業のリクルート活動における様々な制約を、F8VPSのメタバースで解決する試みに取り組んでいます。メタバース空間内の説明会会場で人事担当者がプレゼンを実施し、説明を聞いて画面共有で資料を受け取るといった「Web会議機能」だけでなく、普段は忙しくてなかなか話せないような経営陣と直接話をしたり、アバターや「立ち話機能」を利用して学生が若手社員や内定者などと交流を行うなど、コミュニケーションの機会創出としても有効。

時間的・空間的な制約から解放されるため、全国から様々な人材を募ることができるだけでなく、英語が喋れない場合でもAIが仲介することによって、海外との人材交流が可能になるなど、様々なメリットが考えられるといいます。

さらに、メタバースならではのメリットとして、高速道路の橋梁点検など、インターンでも実際には行くことができないような空間を再現し、遠方から参加して業務が疑似体験できるといったコンテンツの作成も行っています。橋梁点検車のモデルを制作し、クリックすると関連した事業説明ムービーが再生される、また、ジャンクションなどを想定して橋の下側を眺められるようにし、点検項目にあるような錆やひび割れを再現して、損傷部分をクリックすると実際の点検の様子が映し出されるなど、実際の事業でどのようなことが行われているかを学生がリアルに体験できる仕組みを検討しています。

プロジェクトでF8VPSを実際に使用している学生からは、従来のWeb会議ツールの機能が3次元空間でそのまま利用できることや、チャットなどの細やかなコミュニケーション機能が便利だとの声が上がっています。

別のプロジェクトとしては、AIやメタバースを活用した障がい者の就労支援の試みがあり、実際に関西地区の社会福祉法人との協働へと発展。現実空間では身体的な制約があったり、人前に立つのが苦手であっても、メタバース空間の中ではアバターを使って自由に空間を動き回り仕事ができるなどのメリットがあるといいます。「現在は学生がメタバースの空間コンテンツを作成していますが、障がい者の方々がそれを企業から請け負う形で作れるようになれば、就労支援という観点でも役立ちます。メタバース空間の中でのびのびと働いているうちに自信がつき、現実での社会復帰につながるという事例もあります」

その他にも、不動産業者とのコラボレーションで、点群測量による物件の高精度な空間モデルを作成して家具の配置や出し入れのシミュレーションが可能な「メタバース不動産」、デジタルアーカイブ(遺産・記録・伝承)の収益化を試みる「メタバースミュージアム」、高校生向けのオープンキャンパスとして、摂南大学の構内を点群データを使って3次元化し、現地に行かなくても模擬講義を受けたり、ウォークスルーしてキャンパスライフを体験できる「バーチャルキャンパス」など、メタバースを活用した様々なビジネスプランを企画・発表しています。

Web会議機能を活用した説明会、立ち話機能による参加者同士のコミュニケーションも可能
インターンでは体験できないような実地での作業をメタバース空間上で疑似体験、説明を受けられるプラットフォームを作成。実際の点検がどのように行われているのかを解説する動画が映し出されるなど、臨場感のある体験が可能(「メタバース人事」プロジェクト)


点群データとメタバースの連携による高速道路の維持管理

ゼミでは主に、企業課題解決やビジネスアイデアの実現をテーマとしてメタバースを活用していますが、塚田氏自身としては、2022年、関西大学を中心として発足したインフラマネジメント研究会に学外研究協力メンバーとして参加し、メタバース空間を基盤とした高速道路等の公共構造物のデータ管理と、その有用性検証に取り組んでいます。この研究は、関西大学の他に、企業としてはフォーラムエイト、スバル興業、日本インシークが参加しています。

「高速道路を対象として、日本インシークが高精度3次元レーザ計測を行い、取得した点群データを使ってフォーラムエイトがメタバース空間を構築。照明や電柱など、道路に関連し点検が必要な構造物のモデルを作成して、様々なシミュレーションを行うと共に、属性情報を可視化し、維持管理のプラットフォームとすることを目指しています。スバル興業は実際の点検や維持管理を請け負っている企業ですので、このような空間でのデータ管理のメリットを評価する立場として参加されています。現在、定期的に集まって意見交換・話題提供を行いながら、具体的なアイデア出しを行っているところです」

塚田氏が参加する同プロジェクト内のワーキンググループでは、公共構造物の点群データや3Dモデルと、調査・設計・施工・維持管理の各工程で生成される設計図面・点検帳票・現場写真等を管理するデータベースを用意し、位置と参照情報に基づいて、3Dメタバース空間内でのデジタルデータの管理・可視化手法を提案。

「路面に発生するポットホールやひび割れは日常点検でパトロールされており、その点検結果や情報がエクセルなどの2Dデータでまとめられている。通常、皆さんが画像やデータを取得したら、デスクトップのフォルダで2次元管理していると思いますが、これを3次元空間上に転換し様々なデータ同士を紐づけることで、効率的に管理・参照できるのではないかということが、この研究会でやろうとしていることになります」

これについては、情報の登録にあたってどのような機能が必要かといった議論を今年中に実施し、仕様の方針が固まったところで、フォーラムエイトがF8VPSを開発し、関係者で実際の使用をスタートする見込みだといいます。

この他にも、メタバース空間での舗装・附属物点検について、現地から随時上がってくる情報を見ながら、メタバース空間の中で点検が実施できるような手法の検証が進んでいます。具体的には、道路パトロールで撮影したドライブレコーダーの映像からAIを用いて路面のどこがどのようにひび割れているかといった自動判定損傷状態を判定し、位置情報に基づいて判定結果が自動的にメタバース空間に落とし込まれるような仕組みです。

関西大学が中心となり摂南大学、フォーラムエイトも参加するインフラマネジメント研究会で進行中の、公共構造物をメタバース空間上で自動点検、データ管理を行うプロジェクト。高速道路の点群データから3次元モデルを作成し、メタバースによる維持管理手法を検討している。同研究会の活動は、今後、デジタル領域の学術論文サイト「Journal of Digital Life」(https://journal-digitallife.com/)のシンポジウム等でも発表していく予定


自由なアイデアをビジネスとして実現するWebVRプラットフォームに今後も期待

「3次元に全く抵抗がない今の若い人たちは、対面でなければという意識がなくなりつつあるだけでなく、むしろオンラインだからこそできることは何かという発想ができる。その自由なアイデアをビジネスとして成立させる上で、独自でメタバースのプラットフォームを構築し、目的に合わせた自由度の高い作り込みが可能な点が魅力的です」と、塚田氏は、社会課題や企業課題を実践的に解決するための手法としてのF8VPSの有用性に触れます。塚田研究室のゼミでは、学生発案のビジネスプランを、チームで年1回、個人で年1回以上、外部のアイデアコンテストや学会、研究会などへ積極的に応募するという方針を掲げて、毎年多数の表彰実績を積み重ねており、こういった活動をいっそう後押しするツールとしても、活用が期待されます。

「現在、メタバースに関連する多数のプロジェクトが走り出しています。学生たちは、今考えられることはすべて形にして行動に移してくれていますので、今後は、プラットフォームをカスタマイズしたり拡張しながら、ひとつひとつのプロジェクトを結実させていきたいと考えています」。

本取組の一部は、国立研究開発法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)JPMJRX21I2の支援を受けています。

塚田研究室活動実績

朝日新聞「大学SDGs Action AWARD!!」 FINALIST賞

日経BPマーケティング「西日本インカレ2020(合同研究発表会)」予選グループ1位・FINALIST

社会人基礎力協議会 「人生100年時代の社会人基礎力育成グランプリ」 地区予選大会 近畿地区 最優秀賞

社会人基礎力協議会 「人生100年時代の社会人基礎力育成グランプリ」 全国決勝大会 準大賞

関西SDGsプラットフォーム、2025年日本国際博覧会協会 「第3回関西SDGsユースアクション2021」 グランプリ

KUBIC2022 テーマ部門 富士通賞

2020年、2021年 摂南大学 学長表彰

大阪市男女共同参画センター西部館「SDGs LABO2023 わかものアイデアコンテスト」審査員特別賞

大阪信用金庫「第1回学生ビジネスプランコンテストO-BUCs」努力賞


学生主体での活発なプロジェクト活動により様々な実績を誇り、学内広報誌にも取り上げられている
執筆:池野隆
(Up&Coming '23 盛夏号掲載)



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