改訂内容
「基礎の設計・3D配筋(部分係数法・H29道示対応) Ver.7」では、主に以下の改訂を行います。
・鋼管矢板基礎:鋼管矢板基礎設計施工便覧(令和5年)対応
・杭基礎:偶発時の水平押し抜きせん断照査対応
ここでは、その概要を紹介します。
鋼管矢板基礎:鋼管矢板基礎設計施工便覧(令和5年)対応
鋼管矢板基礎設計施工便覧は、平成9年以降便覧の改訂は行われておらず、平成29年道路橋示方書の部分係数法の考え方には対応していない部分がありました。今回の改訂により、未対応であった仮締切りの設計や部材計算について明記された内容となっています。
・仮締切りの設計
仮締切りの設計では、背面側から主働側圧が作用し弾性支承(支保工,底盤コンクリート)および弾性床(地盤)で支持された梁として、弾塑性解析法によって応力,変位量を算出します。この仮締切りの対応により、製品内で合成応力の計算までの一連の計算を行うことができます。また、鋼管矢板本体及び中打ち単独杭については、曲げに対する応力度に加えて、新たにせん断応力度による計算が追加されています。
図1 仮締切りの設計モデル
・部材計算(頂版接合部の設計)
頂版接合部の設計では、永続作用支配状況及び変動作用支配状況において頂版接合部に生じるモーメント及び引張力,せん断力により各鉄筋スタッド1本に生じる引張応力度及びせん断応力度を算出し、それぞれ鉄筋スタッドの限界状態1及び3に対する照査を行います。
(1)モーメント及び水平力に対する照査
σsd1 + σsd2 ≦ σtyd
ここに、
σsd1:モーメントによりモーメント抵抗用鉄筋に生じる引張応力度(N/mm2)
σsd2:水平力によりモーメント抵抗用鉄筋に生じる引張応力度(N/mm2)
σtyd: 鉄筋スタッドの引張応力度の制限値 (N/mm2)
(2)鉛直力に対する照査
τsd ≦ τud
ここに、
τsd: 鉛直力によりせん断抵抗用鉄筋に生じるせん断応力度 (N/mm2) τud: 鉄筋スタッドのせん断応力度の制限値 (N/mm2)
レベル2 地震動を考慮する設計状況においては、頂版に作用するモーメント及び水平力,鉛直力により頂版接合部に生じるせん断力,引張力,モーメントを算出し、頂版接合部の限界状態1 及び限界状態3に対する照査を行います。
(1)モーメント及び水平力に対する照査
Tm +Ts ≦ Tr
ここに、
Tm: モーメントにより頂版接合部に生じる引張力 (kN)
Ts: 水平力により頂版接合部に生じる引張力 (kN)
Tr: 頂版接合部の引張力に対する制限値 (kN)
(2)鉛直力に対する照査
S ≦ Rr ここに、
S : 鉛直力により頂版接合部に生じるせん断力 (kN)
Rr: 頂版接合部のせん断力に対する制限値 (kN)
・必要頂版厚
剛体とみなせる厚さについては、道示Ⅳ編 7.7.2に下記(1),(2)が示されています。
(1)フーチングは部材としての必要な厚さを確保しなければならない事
(2)基礎の安定計算の前提として剛体と仮定する場合には剛体とみなせる厚さを確保しなければならない事
鋼管矢板基礎の頂版も同様にこれらの要件を満たす必要があります。鋼管矢板施工便覧(令和5年)で剛体とみなせる厚さの算定式が明記されましたのでこれに対応します。
ここに、
h: 頂版の必要厚さ(m)
kp: 換算地盤反力係数 (kN/m3)
λ: 頂版の張出し長(m)
Ec: 頂版のヤング係数 (kN/m2)
P : 単位荷重 (kN)
δ: 仮想井筒ばりにより設計計算モデルに単位荷重を作用させたときの鉛直変位 (m)
A : 外壁鋼管矢板の中心を結んだ線の内側の面積 (m2)
杭基礎:偶発時の水平押し抜きせん断照査対応
端部に配置する杭は、H29道示Ⅳ編 P.288に記載されているように、確保できる用地や他の構造物との干渉などの理由から、フーチングの寸法を大きくできない場合に縁端距離を縮小することが考えられます。
この場合、十分な縁端距離を確保することができないため、レベル2地震動を考慮する設計状況を含めた水平押抜きせん断照査等の照査や仮想鉄筋コンクリート断面等の確保により、所要の性能を満たすように設計を行う必要があります。今回、令和2年杭基礎設計便覧における水平方向の押抜きせん断照査に関する記載および橋梁構造物設計施工要領を参考に、偶発時の水平方向の押抜きせん断照査の対応を行います。
Sh ≦ Ppa(=As・σsy・ξ1)
ここに、
Sh:水平方向の押抜きせん断力 (kN)
Ppa:水平方向の押抜きせん断耐力 (kN)
As:有効幅内に配筋されたフーチング下面鉄筋の断面積 (mm2)
σsy :フーチング下面鉄筋の降伏強度の特性値 (N/mm2)
ξ1 :調査・解析係数
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