Ver.16の改訂内容
今回は「土留め工の設計・3DCAD Ver.16」で対応した下記の改定内容についてご紹介いたします。
・逆解析ツールのパラメータ推定として支保工のバネ値(水平バネ定数)に対応(Advanced)
・弾塑性法(解析法Ⅱ)において埋戻し土を考慮した撤去時の検討に対応(Standard)
・FEM解析(周辺地盤の影響)において局所安全率の計算に対応(Standard)
・法面の影響を考慮する場合、法面上への上載荷重の載荷に対応(Lite)
逆解析ツールのパラメータ推定として支保工のバネ値(水平バネ定数)に対応
既知の条件から結果を得る順解析に対し、結果から未知のパラメータを得る手法は逆解析と呼ばれます。Ver.16では逆解析ツールによる推定パラメータとして、従来の地層パラメータに加えて支保工のバネ値(水平バネ定数)の推定に対応しました。支保工バネ値については基準類で通常の切ばり支保工やアンカー支保工などの算定式は記載されていますが、切ばり支保工がなく隅火打ちのみである場合のバネ値の算定方法などは明記されていません。このような場合に逆解析ツールを用いることにより、推定パラメータを変動させた繰り返し計算を行い実測値とのフィッティングを行うことで、実際の変位等に応じた未知の支保工バネ値を推定することができます。
図1 逆解析による支保工バネ値の推定
弾塑性法(解析法Ⅱ)において埋戻し土を考慮した撤去時の検討に対応
弾塑性法(解析法Ⅱ)の埋戻し土は図2のように通常の地盤バネと同様に弾塑性地盤バネ(非対称バイリニアモデル)として内部生成され、計算時に考慮されます。なお、弾塑性法の場合は従来通り盛替え支保工(弾性バネ)の設定も可能であり、埋戻し土と同時に設定することもできます。また、埋戻し土のみ、盛替え支保工のみの考慮も可能となっており、多様な弾塑性解析の検討を行うことができます。
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図2 埋戻し土(弾塑性バネ) |
図3 埋戻し土を考慮した弾塑性解析結果 |
FEM解析(周辺地盤の影響)において局所安全率の計算に対応
FEM解析による周辺地盤の影響検討において局所安全率の計算に対応しました。局所安全率は入力した土質物性値に対する要素ごとの安全率であり、モデルの中での不安定領域(地盤のゆるみの程度の評価など)を判定するために使用されます。局所安全率を計算するには従来のパラメータに加え、新たに地層の粘着力cと内部摩擦角φが必要となりますが。本製品では地層データとして入力された値を元にFEM解析に使用するパラメータも内部生成されますので、新たな入力の必要はなく、簡単に局所安全率の結果(図4)を確認することができます。なお、当社の弾塑性地盤解析プログラム「Geo
Engineer's Studio」データファイル(*.GES)のエクスポートにも対応しておりますので、データを連携することで、より詳細なFEM解析による検討を行うことができます。
図4 FEM解析結果(コンタ図が局所安全率)
法面の影響を考慮する場合、法面上への上載荷重の載荷に対応
法面上に上載荷重がある場合の計算(図5)に対応しました。本製品では通常の無限長の上載荷重に加えて、法面の影響による荷重、有限長の上載荷重、建設用重機荷重など複数の上載荷重を同時に考慮することができますので、これまで以上に検討の幅が広がります。
図5 法面の影響による上載荷重
その他の対応項目
Ver.16では、これまでにご紹介した機能に加え、下記についても対応を行っております。
・弾塑性法(解析法Ⅱ)の「掘削側の静止側圧の考え方」で『掘削後』の仮定での計算に対応(Standard)
・鋼矢板(ハット型)において材質SYW430に対応(Lite)
・腹起し(切ばり、火打ちなどの含む)の段数について4段までの検討に対応(Lite)
・3Dアトリビュート(属性表示)に対応(Lite)
また、上記以外にも複数の要望に対応しており、今後も機能拡張・改善を予定しております。ご期待ください。