ウイルス解析
プロジェクト
Folding@home
今回は、米国発の医療系オンライン解析プロジェクト「Folding@home」について紹介します。
分散コンピューティングという手法を利用し、インターネットを介して世界中のコンピュータを使うことで、スパコンに匹敵する計算能力を獲得しています。
Folding@homeとは?
Folding@homeは、2000年にスタンフォード大で発足した解析プロジェクトで、分子シミュレーションにより、がん、アルツハイマー、パーキンソン病などの病理研究を行っています。今春、新型コロナウイルス(COVID-19)についてのプロジェクトが追加されたことがニュースになり、知った方もいるかと思います。
このプロジェクトでは、分子シミュレーション解析に分散コンピューティングを使っています。分散コンピューティングとは、膨大な時間がかかる計算を、複数のコンピュータに分けて行うことで、計算時間を短縮する技術のことです。実際にインターネットに接続している世界中のコンピュータを使うことで、スパコンに匹敵する計算能力を獲得することも可能となっています。
ツイッターのコメントによると、今年3月に1エクサ(1000ペタ)FLOPSを突破、アメリカのスーパーコンピュータSummitの数倍の処理速度を記録したとのことです。開発が進んでいる日本のスパコン「富岳」が400ペタFLOPSと比較しても、ものすごい数値です。
解析ツールの利用
ホームページより解析ツールを入手しインストールするだけで、誰でも参加できます。CPU使用率など簡単な初期設定を行えば、全自動で解析タスクが開始されます。データダウンロード、計算、結果アップロードが自動的に繰り返されるため、パソコンの電源を入れておくだけで、解析が進みます。当然PCの負荷はかかるので、電気代には注意してください。
解析結果は数値情報だけでなく、Viewerで3Dの構造として確認することができます。分子構造の3Dモデルを画面で確認することができます。
3Dモデルによる解析結果の可視化
その他のプロジェクト例
実は、Folding@homeよりも前に始まった分散コンピューティングを使った解析プロジェクトにSETI@home があります。これは、電波望遠鏡の受信データを解析することで地球外生命体を探すというプロジェクトです。また、SETI@homeの運用成果をもとに、分散コンピューティングの基本システムBOINC(BOINC https://boinc.berkeley.edu/)が公開され、約30の科学プロジェクトに利用されています。
SETI@home
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実施期間
1995年~
概要
分散コンピューティングの先駆け。電波望遠鏡の受信データ解析することで、地球外生命体の存在を探査。
Folding@home
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実施期間
2000年~
概要
COVID-19はじめ、医療分野の分子シミュレーションプロジェクタと多数。2020年3月に、1エクサ(1000ペタ)FLOPSを上回った。
BONIC
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実施期間
2005年~
概要
SETI@homeの成果を元に作成された、分散コンピューティングのプラットフォーム。約30の科学プロジェクトから選択できる。
(Up&Coming '20 盛夏号掲載)