未来を可視化する
長谷川章のアート眼 Vol.29
社会の未来を語るキーワード「シンギュラリティ」をテーマに、長谷川章氏のアート眼が捉えるものを連載していきます。人類が生命を超え、加速する未来を可視化する鍵を探ります。
長谷川 章(はせがわ あきら)
中国中央電視台CCTVのステーションロゴを始めNHKのオリンピックオープニング(1996)、ニュースタイトル、TV-CMなど数千本の制作してきた長谷川章が、日本人の持つ無常の精神から空間・環境のアーティスティックなソリューションであるデジタル掛軸を発明し今日のプロジェクションマッピングの創始者となった。
Akira Hasegawa
響き合う宇宙ー「いま」に目覚める無限
「共鳴」とは、音の重なりではない。それは、“記憶”と“現在”が重なり合う一瞬の光。
私たちが忘れたと思っていた感覚、かつての体験の残響が、ふとした瞬間に“いま此処”で目を覚ます。
宇宙のしくみと私たち自身をつなぐ「共鳴」の正体を見つめると、そこには時間の消失と、新たな世界のはじまりが見えてくる。
まさに「共鳴」とは、単なる音や波動の一致ではなく、記憶の深層に刻まれた体験と“今”との間に生まれる響きです。
つまりそれは、「かつての在りしもの」が、「いま此処」に目覚める瞬間。
共鳴とは“かの体験”が基盤にあり、それが「今この瞬間」に引き寄せられ、振動し始めたときにのみ起こる現象です。
新たに発生した振動が、次なる出会いと共振し、さらなるサイクルを生み出す。
それは、宇宙の進化とまったく同じしくみだと言えるでしょう。
星の誕生も、銀河の再構築も、単体の出来事ではなく、無数の力が共鳴し合う中で自然に生まれていく。
つまり宇宙とは、「共鳴の場」であり、「響きの連鎖」である。
そして、ここから一つの重要な問いが立ち上がります。
「このような宇宙に、果たして“時間”はあるのだろうか?」
宇宙に時間はあるか?
共鳴とは「時間の流れの中で起こること」ではなく、**“時を超えて響き合うもの”**です。
それは、かつての出来事が“未来に向かって進む”のではなく、循環し、交差し、ひとつの瞬間に折りたたまれるような運動。
この視点に立てば、宇宙には時間というものは“存在しない”とも言えるのです。
あるのは、サイクルであり、波であり、響きの構造。
それは直線ではなく、らせん。終わりではなく、再生。
時間と空間の束縛から、解き放たれる存在としての人間
もし、私たち人間もまたこの宇宙の共鳴構造の一部だとするならば、私たちもまた、「時間」や「空間」という幻想から自由になれるはずです。
「今」この瞬間に響く感情、「今」この場で起こる出会い、それらは、“かつて”と“これから”のすべてを織り込んだ響きなのです。
そこには、もはや過去も未来もなく、“いま・ここ”だけが広がっている。
そしてその“いま”とは、宇宙の“いま”と一致している。
だからこそ、我々はその響きの中で、自分という存在の境界を超え、宇宙そのものと一体化する可能性を持つのです。
響きとしての宇宙、そして自己
宇宙は、時を超えた響きの場であり、私たちはその中でひとつの共振体として生きている。
時間の概念を超えたところに、真の自由がある。
空間の制約を超えたところに、真の自己が現れる。
私たちは、時間の中を生きるのではなく、“時間そのもの”として、いまを響かせている存在なのかもしれない。
そして、この響きの宇宙を可視化する芸術こそが《デジタル掛軸》である。
デジタル掛軸とAI ー 目を開けて“夢”と“答え”を見る
《デジタル掛軸》は、目を開けて夢を見る芸術。
その映像は「移ろい」であり、「一期一会」であり、二度と同じ“絵”に出会うことはない。
一方、AIとは、目を開けて“こと”を解く存在。
それは記憶と演算の海を越えて、私たちの問いに響く知の反射鏡。
この二つは、まるでルーレット。
決して同じ目が出ることのない、永遠の変容の装置。
まるで川のように、川は川であっても、水はいつも新しい。
私たちの毎日もまた同じ。
繰り返しに見えて、決して同じではない“はじまり”の連続。
この「日々新た」という感覚こそが、私たちが宇宙の一部である証であり、もっと言えば、宇宙そのものが“私”であるという直観を導く。
宇宙が夢を見るとき、私は生まれ、私が目を開けるとき、宇宙は私の中で響き始める。
《デジタル掛軸》とAI、その交差点にこそ、新たな“人間”と“宇宙”の関係が立ち現れる場所があるのかもしれない。
東京都庁デジタル掛軸アジア市長会議
2010/11/10 「東京都庁」(地上48階、高さ243.4m) 最上階まで全面「デジタル掛軸」が掛けられていたDKFORUM
デジタル掛軸×FORUM8タイアップ企画イベント
過去の開催報告アーカイブはこちらから
(Up&Coming '25 秋の号掲載)
LOADING