1990年代後半、草間さんはコンピュータで絵を描くことが面白く、プライベートで様々なソフトを試行。そのような折、3DCGに対応するShadeが国産ソフトで分かりやすく、ベジェ曲線を使い慣れていた自身には自由曲面でモデリングできるメリットもあったことなどから、1999年に初めて購入します。
当初はこれにより、モチーフとして虫にフォーカス。「3DCGを齧り始めました」の題名で、当時のShade Pro. R4のCD-ROMをキリギリスが齧っている絵(2000年)などを制作し、やはり趣味で自らHTMLを書いて作成したWebサイトにそれらをアップ。また、写真などを基に制作したクルマの絵を投稿したところ、それがきっかけとなり雑誌広告に採用されるなど、当該分野における活動の裾野は着実に広がっていきました。
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初期のShade3Dモデル作品 |
その後、社内では手描きの絵やプレゼンテーションソフトで作った簡単な絵を使うのが通常だった前職時代、草間さんが関わる業務の技術的な説明用にShade3Dでしっかりとした絵を自宅で描き、それを会社に持参して使うというパターンが定着。そのうち、直接の業務ではなかったにも拘わらず、担当部署から技術広報で社外向けに使う絵の制作依頼を受けるようになります。
その一例が、電気自動車(EV)と住宅を繋ぐV2H(Vehicle to Home)のイメージ図で、同システム内で電気が流通する仕組みをCGで可視化(2010年)。その成果は後年、EVを新型モデルに差し替えつつ、V2Hの概念説明用に長く利用されています。そのほか、自身が携わったエアコン開発に際しての、エアコンから出る風が車内を循環する様子の説明、またEVによる次世代交通システムの紹介など、2016年の自らの退職前まで技術広報向けニーズに即し各種イメージの制作に対応。伝えづらい技術の肝をいかに表現・強調すべきかを試行錯誤する中で鍛えられ、起業への思いも醸成された、と言います。
2017年にKUSAMA DIGITAL WORKSを創業し、最初に手掛けたのは建設パースの制作。ただ、各工務店が保有するCAD機能である程度対応できたこともあり、市場性の制約に直面。その後、橋梁を始めとする道路構造物の長寿命化が注目される中、その技術開発にフォーカスする団体が策定中のガイドライン向けにイラスト制作者を公募しているという情報に触れて応募し、コンペを経て2018年に採用されています。2022年に当該プロジェクトが終わり同組織解散後は、公益社団法人 土木学会向けの業務へと発展。1)橋梁の上部・下部構造や部材、装置などを説明するための俯瞰図、2)高速道路の床版交換シーン、3)橋梁に設置された支承の説明と劣化した支承部のクローズアップ、4)劣化した橋梁内側のクローズアップ、などの絵を制作。そこでは特に趣味で培った汚し塗装のテクニックを駆使。近年は、学会に参加していた企業などを通じ、行政向け提案資料の説明図などの簡易かつ短納期での制作ニーズが増す傾向にあります。
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土木学会向け業務で作成された技術説明のためのモデル 錆の表現に汚し塗装のテクニックを駆使している |
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展示会のプレゼンテーション用に作成された1/35スケールの桁橋 |
一方、Shade3Dで形状をモデリングし、3Dプリンタでその立体物を出力するサービスも展開。実物だと重量のあるEV用バッテリーのモジュールを持ち運びが容易な1/2スケールの(2019年)、また試験施設に実在する点検用桁橋を展示台に設置可能な1/35スケールの(2023年)、それぞれ樹脂製立体物を展示用に制作。さらに現時点では趣味の世界としつつ、同様な手法で1/24スケールの自動車の模型もまさに作成中と明かします。
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Shade3Dモデルを3Dプリンタで出力した1/24スケールの自動車の模型 |
「鉛筆みたいな道具としてスケッチ感覚でサクサク絵を作れるところ」。草間さんはShade3Dが特に優れている点をこう表現。図面通りに寸法を入れて形を作っていくのならCADなど他のソフトがあるのに対し、絵や写真を基にササっと3DCGを作るのには、自由曲面やポリゴンを組み合わせて行えるShade3Dが一番使いやすかった、と評価を述べます。
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