Vol.
 9

Studio 影侍

(STUDIO KAGE SAMURAI)

代表者 曾 鈺夫
(Tseng Yu Fu)さん

URL
https://www.kagesamurai.com/


所在地 :台湾台中市
プロフィール
 「Studio 影侍」の代表者を務める、曾鈺夫(Tseng Yu Fu)さん。顧客とのやり取りを円滑にする狙いから、「Taki(タキ)」という日本向けビジネスネームも有します。もともと同様な趣味を個別に育んできた若者たちが、2006年に開催された台湾の同人誌即売会で遭遇。それを契機に、それぞれ異なる得意技術を持ったパートナーが連携し動画や各種オブジェの制作に当たる、現行組織の原型となる繋がりを形成。その後、3Dプリンターの高度化・低価格化の進展を背景に、自身らもその関連技術を習得するとともにノウハウを蓄積。これを受けて2015年6月、それを一つのコア技術とするStudio 影侍の設立に至っています。  
同社は、曾さんを含む2名の主要メンバーと4名のスタッフから構成。プロジェクトごとに最適なメンバーがパートナーを組み、その都度独立した工房のように機能する体制で運営。そのユニークな社名には、「影」のように、また日本古来の忠実な「侍」のように顧客をサポートしようとの企業理念が込められています。
 
独自の3Dプリント技術をコアに多様なデザインの立体物作製をサポート
Shade3Dの活用で高品質・短納期ニーズへの対応を一層強化

「私たちのスタジオは当初、3Dプリンターを使っていろいろなものを創出(するところからスタート)してきました」

1980年代にその基盤技術が萌芽し、その後の関連技術の継続的な発展を経て、特にキーとなる技術の特許保護期間が終了した2014年以降、世界中で急速に普及してきた3Dプリンター。台湾にも2014年から2016年にかけて到来したそのブームの只中、曾さんらは3Dプリントの材料やその応用技術について学びながら、各種プロジェクトに参加。製品開発の試作プロセスで形状のみを早期に作製するラピッドプロトタイピングでは、競合他社を凌ぐ短納期かつ高品質を実現できるまでに習熟。そのような中で、当初は3Dプリンター自体の開発にも携わったものの、次第にウェートはその活用へとシフトしてきました。

Studio影侍では現在、1)グラフィックデザイン、2)Webデザイン、3)インテリアデザイン、4)製品の開発・設計、5)3C(台湾で多用されるコンピュータ、通信および家電の総称)製品の販売、および6)各種イベントの企画・サポートなどをカバー。そのうち、同社で取り扱う3Dプリント適用業務は、1)卒業作品など大学生による設計成果の立体物作製支援、2)工業デザインの試作品作製、3)他社設計あるいは自社設計による記念品などオブジェの制作、など多岐に渡ります。そこでは、特にコーティングや色付けなど仕上げ工程での細かな処理、あるいは製品や作品ごとに異なる最適な材料の選定に当たり、3Dプリンターの開発経験を通じて得たノウハウを駆使。当該プロジェクトで求められるクオリティを確保しつつ、立体物をより速く、より美しく作製できることが自社の強み、と曾さんは位置づけます。

同氏らがShade3Dを導入したのは、会社設立前年の2014年。仲間同士で交流や情報交換を重ねる中、気になる高精度のモデルがあり、それがどんなソフトで作られるのか探るうちShade3Dに到達。Webサイトを介して、まずShade3Dで制作されたモデルファイルを入手。それを3Dプリントしてその完成度の高さを改めて実感。次いで、Shade3Dのトライアル版を試行したところ、操作性に優れ初心者にも使いやすかったことなどから、正式に購入を決めています。

特にShade3Dが3Dプリントを支援するファイルの修復機能を有し、より良い品質のモデルファイルを出力できることに、曾さんは注目。加えて、STLをはじめIGES、3ds、OBJなど多様なファイルフォーマットに対応するメリットを説きます。

同氏は、そのようなShade3Dを利用して取り組んだ最近の事例として、1)自社設計で細部までこだわり微修正を重ねてきた刀のオブジェ、2)模型の色付け作業などで余分な塗料を取り除く吸着剤、3)サーバの予備用キー、などを列挙。いずれも近々に自社あるいはOEM商品として市販化される予定といいます。

これまでの自身らの利用を通じ、3DCGソフトとしてのShade3Dの可能性を確信。曾さんは、Studio影侍のビジネスパートナーはもちろん、他の業界関係者にもその採用を広めていきたいとの考えを醸成してきました。その具体化にあたっては、前述した同社業務の柱の一つ、3C製品販売の一環としてShade3Dを位置づけ。台湾市場におけるその代理販売の事業化を検討中です。


▲1/3 刀 模型 ▲模型用塗装ブース(小型)
▲模型用塗装CPL強力塗装ブース(大型) ▲サーバの予備用キー
 


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執筆:池野隆
(Up&Coming '21 春の号掲載)
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