最先端表現技術利用推進協会レポート

Vol.50

第9回 羽倉賞受賞作品発表

羽倉賞は、表技協の創設者であり、3D立体映像、ホログラフィ、VRなどの最先端表現技術の研究、普及に多大な功績を残された故羽倉弘之氏の功績を称え、表現技術の質を高めて広い分野への普及に貢献するために、2017年に表技協により創設されました。分野を問わず最先端の表現技術を活用した作品および取り組みを通して社会に貢献した功績を表彰します。2025年11月21日、FORUM8デザインフェスティバル2025 Day3にて第9回羽倉賞表彰式を実施。応募作品の中から、羽倉賞1作品、フォーラムエイト賞2作品、優秀賞2作品、奨励賞4作品の計9作品が選ばれました。

羽倉賞

「触覚と香りで体感する3次元コンテンツ
   ~体感!昭和100年商店街 砧ラボと一緒におでかけリポート~」

NHK放送技術研究所

触覚・香り・3D映像により、昭和100年商店街をインタラクティブに体験できます。コンテンツの実在感を高め、理解を深める新たな感覚メディアの可能性を示します。体験者が登場人物と感覚を共有することで、言語に加えて直感的に情報や感情を伝える、誰もが安心して楽しめる標準的な提示方法の確立を目指します。

推薦:超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム

フォーラムエイト賞

「超人スポーツ・身体×テクノロジーの社会変革」

東京大学 先端科学技術研究センター 稲見 昌彦

身体を情報システムとして理解し、身体性を探り、テクノロジーやAによって拡張された能力を人間が自在に扱う人間拡張工学の研究。例えばロボットアームを装着することで手術では複雑な操作も1人の医師でできる可能性が高まる。加齢とともに「できない」が増える高齢者に「できる」選択肢を増やすこともできる。超人的な機能を応用して新しいスポーツも開発できる。

推薦団体:最先端表現技術利用推進協会

フォーラムエイト賞

「世界初、熱可塑性複合材(CFRTP)プレス一発成形でホイールを実現」

株式会社ラピート

世界初の熱可塑性複合材(CFRTP/ガラス繊維強化樹脂)のプレス成形技術を活用したホイールを開発。複雑形状成形の自由度と高効率生産を両立し、軽量化・高強度を実現。自動車分野の環境負荷低減と次世代材料活用に貢献する革新的技術である。

推薦団体:最先端表現技術利用推進協会

優秀賞

「リアルタイム3D空間伝送
~空間の隔たりを超えて感覚を共有するエンター優秀賞 テイメント・コミュニケーション体験の創造 ~」

NTT株式会社 人間情報研究所

EXPO’70跡地とEXPO’2025夢洲会場をIOWN-APNで接続し、Perfumeのパフォーマンスを低遅延で計測・伝送・再現。夢洲会場では巨大3D LEDと床面の触覚振動により、視覚・聴覚・触覚を組み合わせた新しいライブ体験を提供。

推薦団体:超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム

優秀賞

「関与媒質のためのStroke Transfer」

Stroke Transfer 研究チーム
(白嶋 直人、藤堂 英樹、山岡 優希、鍛冶 静雄、小林 邦彦、下田平 東奈、楽 詠灝)

本研究では、煙・炎・霧にアーティストの筆致を転写して動的絵画調アニメーションを生成する「ストローク転写」技法を開発。SIGGRAPH 2025技術論文に採択され、手描き風表現と作業負担軽減を両立した。

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推薦団体:情報処理学会


奨励賞

「伝統文化×最先端テクノロジー 「CHRONOSENSE」
~50周年を“ことほぐ”光と音のミュージアム~」

株式会社Droots

迎賓館赤坂離宮(開館50周年)で、伝統文化や歴史的遺産の魅力と最先端テクノロジーを融合した初の夜間冬季ライトアップイベントを開催。能や歌舞伎とテクノロジーが融合し、「時間の流れ」を体感できる瞬間を表現。

「音声対話AI「お部屋コンシェルジュ」」

東京都立産業技術大学院大学 五十嵐 俊治

お部屋コンシェルジュは、高齢者住宅で入居者と職員をつなぐ音声対話AI。日常会話から認知・気分の変化をリアルタイムで推定し、検査なしで認知機能を把握、職員の負担も軽減。

「RoboSax Melody Slot Machine」

熊本大学 上瀧 剛、理化学研究所 浜中 雅俊

RoboSaxはサーボモータで演奏を自動化した楽器で、楽譜なしでも演奏可能。Melody Slot Machineは、類似構造のメロディを入れ替えて楽しむインタラクティブ音楽システムで、音楽構造の分析にAIを活用。

「3DCGアニメーション制作向けのスタイル転写パイプライン Forest Tale(Technical study ver.)」

平澤 直(アーチ株式会社/株式会社グラフィニカ)、小野 竜太、齋藤 史、小宮 彬広、酒井 邦博、小山 裕己(株式会社グラフィニカ)、藤堂 英樹(拓殖大学)

人物全身写真の照明効果を後処理で編集できる技術を開発。照明を新方式の離散表現で近似することで、強弱のある影や光沢をよりリアルに再現。

(Up&Coming '26 新年号掲載)



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