Vol.10
庄川 

富山県・岐阜県


NPO法人 シビルまちづくりステーション  http://www.itstation.jp/
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流域及び河川の変遷概要

写真1  弁財天神社(元雄神神社)

図1  庄川は小矢部川の支川を、西方から順次本流としながら成長

庄川は、その源を岐阜県高山市の烏帽子岳(標高1,625m)に発し、各支川を合わせて北流し、富山県南砺市で利賀川を合わせた後砺波平野に出て日本海に注ぐ、幹川流路延長115km、流域面積1,189km2の一級河川です。

歴史時代以降、庄川の主流は野尻川→中村川→荒俣川と西方に移動しながら、中世末は千保川が主流でした。この頃1586年(天正13年)に庄川上流で大地震(天正地震)があり、扇頂部の庄川町金屋で山崩土砂が庄川の流れを止め、その堆積決壊による大災害が危惧されました。

しかし川中に小島があったので、当時の主流だった千保川と小さな支川だった中田川の二方に分れたので、その被害は少なかったようです。この中田川の川筋が現在の庄川筋になり、洪水の度に大きくなったのです。洪水後に小島のお蔭で洪水被害が少なかったとし、加賀藩主前田利長がこの小島に弁財天社を建立し水神として祀りましたが、その後の大出水のため本殿は右岸山麓に移転されました。


写真2  松川除

   

江戸時代・加賀藩による治水

上記のように古来庄川は平野に出た後、扇状地を発達させてきたのです。

この流れを中田川に一本化するために、二代目の藩主前田利常が1670年(寛文10年)から扇頂部で始めた築堤工事が、「松川除」(延長約1.5km:堤防を固めるため松が植えられました)と呼ばれるもので、45年の歳月と100万人を要して完成しました。その後1772年(明和9年)、融雪洪水による堤防決壊がありましたが、現在も霞堤として効用を果たしています。


現▶近代の治水

庄川の国直轄事業は、河川法制定前の1883年(明治16年)に開始されましたが、1886年(明治19年)に打切り竣工となりました。その後1896年(明治29年)に河川法が制定され、1900年(明治33年)、庄川は同法による富山県最初の国直轄事業に採択されました。

その事業の内容は、川幅の拡張及び小矢部川との分離工事です。 分離工事は左図の旧河道を廃止して下流に新河道(L≒5km、川幅約450m)を新設する工事です。この事業は1914年(大正3年)までの15年の継続事業となり、現在の姿となったのです。

 

図2  小矢部川との分離工事


利賀ダムの建設

写真3  利賀ダム完成予測図

写真4  御母衣ダムH=131m(ロックフィルタム)

1989年(平成元年度)支川利賀川で計画中だった「利賀ダム」の実施計画調査が採択されました。 ダムは高さ112m、堤体積49万m3の重力式コンクリートダムです。

その目的は洪水調節(ダムサイトで500m3/s調節)、流水の正常機能維持及び工業用水(日最大8,640m3)の開発を行うもので、総貯水容量31,100千m3です

現在、国道471号の利賀大橋が完成し、一部供用している段階で、2021年(令和3年度)から転流トンネルに着工し、ようやく本体工事に着工する予定です。


発電等の利水

水利用については、農業用水として砺波及び射水平野の水稲栽培を中心に15,600haのかんがい用水、水道・工業用水として利用されています。また発電用水としての利用も盛んで、1930年(昭和5年)竣工の小牧ダムやその後完成の御母衣ダム等が階段状にあり、発電所は28箇所で、総最大出力は約100万kWです。


見どころ寄りどころ

  • 御母衣ダムによって水没する予定だった桜を湖畔の国道156号沿に移植したのが樹齢450年と言われる荘川桜です。
  • 合掌造りは富山県南砺市(旧平村、旧上平村)及び岐阜県白川村で見られる集落で1995年(平成7年)にユネスコ世界遺産に登録されました。
  • 前述で1585年(天正13年)発生の天正地震について触れましたが、御母衣ダム湖の上流付近左岸の山腹にあった帰雲城が、地震による山体崩壊とともに崩壊し、現在もその跡形も見つかっていません。この付近は金採掘がされていたことから、埋蔵金伝説もありますが、確証はありません。
写真5  荘川桜 写真6  合掌造りの民家 写真7  帰雲城址

<参考文献>
1) 「地震の日本史」 寒川 旭 中公新書1922 2007年11月発行
2) 国土交通省HP
 https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen/jiten/nihon_kawa/
3) 「富山工事事務所六十年史」 建設省北陸地方建設局富山工事事務所 1996年2月発行(非売品)
4) 「とやまの水」 深井 三郎 北日本新聞社 1985年3月発行



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(Up&Coming '22 新年号掲載)

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