驚き、長持ち... 本当に衝撃的な映画5選

「衝撃の結末!!」、「あなたはきっと騙される!!」。どこかで見聞きしたキャッチコピーではないですか? サプライズやどんでん返しを狙った映画は沢山あるのですが、どれも結末の数分だけショッキングになりがちです。本当に衝撃的な映画であれば、もっと手前で大きな仕掛けが明らかになり、長く驚きが持続するものでは…?

そこで今回は、途中から驚きの展開が待ち構えている衝撃的な映画5 作品をご紹介します。映画の結末も、途中経過でさえも、まだ映画を見てない人には決して話さないでください…。

手紙に隠された母の壮絶な人生
「灼熱の魂」

洋画の超大作を手掛ける売れっ子監督ドゥニ・ビルヌーブの出世作です。急死した母親の遺言書を受け取った姉弟。遺言書には「2通の手紙を父親と兄に届けろ」と指示が。父の名前すら知らず、兄は存在自体を知らされていなかった。二人に手紙を渡すために、母の故郷である中東へと旅立つのだが…。

自らの出自を知るためのロードムービーと思った矢先、母親の若い頃がメインに描かれていきます。キリスト教とイスラム教の内戦で揺れる国で、母親は一体何を経験したのか。手紙を使って父と兄に何を伝えたかったのか。一度観たら決して忘れられません。

2010年製作 カナダ・フランス映画 上映時間:131分 配信:アルバトロス・フィルム
監督:ドゥニ・ビルヌーブ(「ブレードランナー2049」「DUNE」) 出演:ルブナ・アザバルほか

魂の救済の終着点は
「シークレット・サンシャイン」

韓国の巨匠イ・チャンドン監督の衝撃作。とある地方都市に移住した母と息子。慣れない田舎暮らしに四苦八苦しながらも、次第に周囲にも溶け込み幸せな人生を送ろうとするが…。

どんな衝撃的な映画にも伏線らしきものが張られているのが常ですが、今作は1ミリのヒントも与えてくれません。さらに、あることが起きた後に、今作のメインテーマである「魂の救済」が描かれます。何をすれば報われるのか。誰が救いの手を差し伸べてくれるのか。主演を努めたチョン・ドヨンは今作の演技が評価され、カンヌ国際映画祭に韓国人俳優として初の女優賞を獲得しました。

2007年製作 韓国映画 上映時間:142分 配給:JAIHO
監督:イ・チャンドン( 「ペパーミント・キャンディー」「オアシス」) 出演:チョン・ドヨン、ソン・ガンホほか

誰もが知るべき 驚きの実話
「誰も知らない」

1988年に東京で起きた子ども置き去り事件を下敷きにした映画。2DKのアパートで暮らす母と4人の子ども。しかし、親が出生届を出しておらず、就学年齢になっても学校に行けない無戸籍の子どもたちだった。勉強もできず、友達もできず、外出すると怒られる。閉鎖的な生活を送る日々だったが、ある日突然母親が姿を見せなくなり…。

一番上は15歳、他は小学生以下の幼い年齢。大人がいない中で必死に生きようとする子どもたちが描かれます。同じく是枝監督作の「万引き家族」では、虐待されている子どもを助けて共同生活を送る物語になりましたが、今作の経験が大きく影響しているのでしょうか。映画なら助けられるかもしれない、助けられたかもしれない、と。

2004年製作 日本映画 上映時間:141分 配給:シネカノン
監督:是枝裕和(「万引き家族」) 出演:柳楽優弥、YOU、遠藤憲一ほか

素朴なフィルム撮影の奥に隠された衝撃
「幸福なラザロ」

20世紀後半、イタリアの片田舎で暮らす青年ラザロ。小作人として、領主が営む農業を無給で手伝い続けている。何も望まず、奢らず。お願い事は断れない性格。ひょんなことから領主の息子と仲良くなり、彼の悪行に付き合わされる羽目になるのだが…。

新約聖書に登場する「ラザロ」というイエス・キリストの友人が主人公のモデルになっており、どこか非現実的なキャラクターになっています。16mmフィルムの撮影により素朴かつ前時代的な映像に仕上がっており、聖書由来の寓話的な物語感と相性抜群です。

何より、こんな素朴な映像の中に衝撃的なシーンなどあるはずがない、と誰もが思い込んでしまう点が素晴らしく、そして恐ろしい…。ラザロは一体何者なのでしょうか。何が目的なのでしょうか…。

2018年製作 イタリア映画 上映時間:127分 配給:キノフィルムズ
監督:アリーチェ・ロルバケル 出演:アドリアーノ・タルディオーロほか

予想外のアクシデントが生んだ絆
「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」

1970年代、アメリカにある由緒正しき全寮制学校。冬休みで久々の休暇に浮かれる学生のアンガス。しかし、ある理由で学校に置き去りになってしまう。一方、皮肉屋で嫌われ者の歴史教師ポールが休暇中の宿直担当となり、アンガスと食堂長のメアリーの3人で2週間もの休暇を過ごすことになるのだが…。

日本公開前はほぼ存在すら知られていなかったのですが、アカデミー賞で多くのノミネート&主演女優賞を獲得し、一躍話題になった作品です。年齢も立場も違う3人の共同生活。もちろん上手くいくはずがない。しかし、突然アンガスに降り掛かったアクシデントによって、事態は思わぬ展開へと進みます。前後の文脈関係なしで、誰もが予想できない方法で人間ドラマを動かす手法に驚きました。順当な関係値の積み上げでは起こり得ない、映画がかけた魔法によって泣き笑いできる人間ドラマでした。

Seacia Pavao / © 2024 FOCUS FEATURES LLC.
2023年製作 アメリカ映画 上映時間:133分 配給:ビターズ・エンド
監督:アレクサンダー・ペイン(「ダウンサイズ」「ファミリーツリー」)
出演:ポール・ジアマッティ、ダバイン・ジョイ・ランドルフ、ドミニク・セッサほか


(Up&Coming '24 秋の号掲載)

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