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ユニバーサル・コミュニケーションデザインの認識と実践

太田 幸夫
ビジュアル・コミュニケーションデザイナー、太田幸夫デザインアソシエーツ代表
特定非営利活動法人サインセンター理事長、多摩美術大学 前教授
LoCoS研究会代表、日本サイン学会理事・元会長、日本デザイン学会評議員
一般財団法人国際ユニバーサルデザイン協議会評議員
A.マーカスデザインアソシエーツ日本代表
 

Vol.8 国連大学紹介の世界初コンピュータアニメーション
   
生存は分かち合いから
「見るだけで誰でもすぐに国連大学の理想と活動を理解できる新しいコミュニケーションメディアをデザインしてほしい」と国連大学から頼まれた。1978年から79年にかけて半年間、世界から5人、日本からは筆者が1人、アメリカの国立研究所に招聘されて「国際相互依存状況の視覚化」をテーマとする国際プロジェクトを終えて帰国し3年程経過していた。その間、国連大学の新聞をリデザインしたり、新規プロジェクトの冊子を頼まれてデザインしていた。

国連大学の説明によると、11ヶ国語で新聞を発行したり沢山の書籍を出版してきた。けれども普通の大学のようにキャンパスもないしカリキュラムもない。そして沢山の学生もいない。それ故、1969年にウ・タント事務総長の発案で日本に設立されて以来、国連大学のことを誰も理解できていないのだ、という。

グラフィックデザインを手がけてきた立場から、新たに印刷物を創るだけではその要望に応えられないだろうといろいろ思案した。当時イギリスの友人Alan Kitchingがコンピュータアニメーションのソフトを研究していた。日本にあるアメリカ資本の IT企業の大型コンピュータを使っていた。それまで数年間の来日の成果を時々聞いていたので、まだ未完成の心配はあったけれど、その友人との恊働を国連大学に提案したところ了解が得られ、その上、半年間の彼のホテル代を出してくれた。

1983年8月、筆者と大学側で作業を開始。アンティックス・システムと呼ぶソフトはまだ、開発途上で完成していなかった。けれども、彼が来日するまでの2ヶ月間で大学スタッフ数人が努力を傾注した文字による脚本を、ビジュアルシークエンス(視覚的な脚本)に仕上げることができた。彼が10月から参加して筆者の下絵をデータ化し、わずか7週間で全てのアニメ化を終えることができた。これは驚異的早さである。

音響効果については別途、NHK効果部で定年まで、音響効果を手がけてきた筆者の高校先輩(松崎茂氏)の協力を得ることができた。大学からNHKに提出してもらった協力依頼も快諾されたので、その巨大な音響機材装置を使って「洗濯機から水を排水する時の音」と言うと、5分もかからずにその通りの音響を創ってくれた。

ソフト開発をしてきたKitchingに言わせると、まだそのレベルは石器時代だと言う意味で名付けられたアンティックス・システムは、キーボードを使わず、タブレット上に並んだマークを、スタイラスペンで触るだけでよい。あらゆる動きが用意されていて、2次元の絵柄が瞬間で4次元の映像に表現される。例えば英文字Aが英文字Zに変化する(メタモルフォーゼ)。途中の形がすべて、ワンタッチで描かれる。初心者であっても、5分か10分で使い始めることができるすぐれものであった。

「人類が生存できるかどうかは、持っている知識と経験を分かち合えるかどうかにかかっています。人間の生活は、あやなす糸のように複雑です。」という内容を表現するイメージの素材として昔の手鞠(てまり)をモチーフにした。その色とりどりの糸を、球状に絡めていく動きも難なくこなした。ハトの群れが前後して飛び続けながら、地球の周りをぐるりと囲むさわやかな表現もきれいにこなした。

ナレーションは11カ国語で、日本語は石坂浩二さん、英語はピーター・ユスティノフ、仏語はジャンヌ・モローと各国トップ陣の協力を得ている。けれども、絶え間ない言語による説明が続く英語版に対し日本語のナレーションは、映像との関係がよく考えられている。必要かつ効果的な沈黙の「間(ま)」が活かされている。映像を観てそのイメージに魅され理解したいという自然な衝動を覚えるのを待って、ナレーションが補完する。石坂ナレーターのキャリアが光っていた。

内外100名の記者団を集めた発表会も成功裏に催された。そして1ヶ月も経たない東横線の電車の中で突然、「先生、先日はお世話になりました。お陰さまで。」という声。「お陰さまとは?」と聞きただしたところ、アンティックス開発に協力したITメーカーの担当者は「すでに10セット販売できました」と言う。

世界初のコンピュータアニメーションが国連大学「生存は分かち合いから」の開発事例によって、その可能性を初めて証明できたからだ。NHKも買った。アニメーションの専門学校も日本最大手のセルによる手描きアニメーションの会社もアンティックを発表会直後に購入したのだ。当時のお金でアンティックスのハードとソフト1セットの値段が1億6千万円もする時代であった。筆者にもKitchingにも1円も払われていない。

■「生存は分かち合いから」
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(Up&Coming '15 秋の号掲載)
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