連載【第22回】

セルフケアに役立つマインドフルネスストレス低減法(MBSR)

profile

関西医科大学卒業、京都大学大学院博士課程修了・医学博士。マウントシナイ医科大学留学、東京慈恵会医科大学、帯津三敬三敬塾クリニック院長を経て、現在ピュシス統合医療クリニック院長。公益財団法人 未来工学研究所研究参与、東京大学大学院新領域創成科学研究科共同客員研究員、統合医療 アール研究所所長。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本心療内科学会登録指導医、日本心身医学会専門医、日本森田療法学会認定医。日本統合医療学会認定医・業務執行理事。日本ホメオパシー医学会専門医・専務理事。『妊娠力心と体の8つの習慣』監訳。『花粉症にはホメオパシーがいい』『がんという病と生きる森田療法による不安からの回復』共著。『1分で眠れる4-7-8呼吸』監修など多数。

最近マインドフルネスMindfulnessという言葉が気になっていませんか。コロナ下の在宅勤務や友人との交流が減ったことから、こころが疲れている人がこのマインドフルネスに興味を持つようになったかもしれません。このシリーズでも過去にマインドフルネスを取り上げたことがありますが、今回はマインドフルネスの実践方法で、セルフケアとして有用であるマインドフルネスストレス低減法(MBSR)を紹介したいと思います。

Ⅰ. マインドフルネスの広がり

マインドフルネスは医療から始まり、教育、法律、リーダーシップやビジネスなど様々な専門分野において、効率性を高め、幸福と健康を増進することをきたして適応されています。米国ではシリコンバレーの起業家やプロスポーツのコーチ、500大企業を含むリーダーたちの間で支持され、アップルやグーグルなどは社員研修の一環としてマインドフルネスの実践、活用によって生産性と創造性の改善、社員の生活の改善と幸福感をたかめるように努めています。マインドフルネスとは日本語の意味としては、「心をとどめておくこと」あるいは「気づき」となります。Jon Kabat-Zinnが「マインドフルネス瞑想」を臨床に取り入れ、1979年以降「マインドフルネスストレス低減法(Mindfulness-Based Stress Reduction:MBSR)」を提唱したのが始まりです。

Ⅱ. マインドフルネスのABC

Stephen Murphy-Shigematsuはマインドフルネスへの理解をABCとしてわかりやすく説明しています。A;Awareness(気づき);自分の考えていること、していることをもっと意識できるようになること。自分の心や体の中で起きていること、自分の思い、感情、感覚を認識すること。B;Being(存在すること);価値判断や自己批判、そして何かを絶えずしていなければならないという考えを一時的にやめて、ただ自分の経験とともにあること。C;Clarity(明瞭さ);マインドフルネスの気づきとは、物事を歪めることなく、あるがままに気づくことである。何であれ自分の生活で起こりつつあることに注意を向けてはっきりと眺めること。自分が望むようではなく、あるがままに物事を見ること。そしてマインドフルネスのスキルは特定(呼吸やイメージなど)に注意を集中することで、今自分が体験していることを観察することから、自己の捉えている身体感覚、感情、思考から一定の距離を置く(スペースを作る・間をとる)ことであると述べています。

Ⅲ. マインドフルネスストレス低減法(Mindfulness-Based Stress Reduction:MBSR)

ピュシス統合医療クリニックで行っているMBSRのプログラムを図に示します。MBSRはグループワークでもあり、8週間の注意を集中するトレーニングです。週1回の2時間半の参加と1日のリトリートからなっています。ボディスキャン、ヨーガ、呼吸瞑想や静座瞑想などを身に着けていくことで、身体感覚に気づき、情動調整や自己の体験のとらえ方の変化をもたらします。

プログラムの第1週から3週ではボディスキャン、ヨーガを行う中で、身体を通して、いままで無意識であった「自分とつながっていること」が意識化されていきます。自分の身体への感覚、そして五感がクリアになっていきます。また呼吸瞑想を学ぶことで、呼吸に注意を向けていく過程によって、思考優位から体の声を聴くようになっていきます。第4週と5週ではストレスについて学び、ストレス対応としてマインドフルな対応を学ぶ大切な時期です。不快な出来事をとおして、身体の示しているストレス信号に気づき、自分の行動がいかにストレスによってかりたてられているかに気づくようになります。そして日常のストレスを感じたときの自分自身の習慣的な反応に気づくようになります。この習慣的な反応を自動反応と呼んでいます。自動反応に気づくことで、今までと違うストレスの対処法をみにつけていきます。特に、思考や感情をありのままに観察すること、物事を歪めることなくありのままに気づき、その思考や感情から距離を置くことができるようになります。第6週では対人関係において、コミュニュケーションを通してマインドフルネスな対応について学び、第7週では日常生活における様々な場面でマインドフルネスを実践していく練習を行います。プログラムが修了する頃には、日常生活だけでなく、人生においてマインドフルネスな生き方につなげていくことができるようになります。

(Up&Coming '23 盛夏号掲載)