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Vol. 15

一般財団法人最先端表現技術利用推進協会では、5月30日に岩国市の錦帯橋で行われたプロジェクションマッピング「時空の架け橋」を実施しました。今回はそのレポートをお届けします。


■執筆者 町田 聡(まちだ さとし)氏 プロフィール
アンビエントメディア代表 コンテンツサービスプロデューサー。プロジェクションマッピング、デジタルサイネージ、AR、3DメディアのコンサルタントURCF アドバイザー、(財)プロジェクションマッピング協会 アドバイザー。著書に「3D 技術が一番わかる」技術評論社、「3D マーケティングがビジネスを変える」翔泳社 などがある。弊社非常勤顧問。(財)最先端表現技術利用推進協会 会長。
  Twitter:http://twitter.com/machida_3ds
  facebook:http://facebook.com/machida.3DS
  HP: www.ambientmedia.jp

錦帯橋プロジェクションマッピング「時空の架け橋」

錦帯橋にプロジェクションマッピングが したいのですが・・・・

「錦帯橋にプロジェクションマッピングがしたい」という依頼を、山口県の岩国青年会議所の方から頂いたのは、今年の1月の終わりのことでした。岩国青年会議所60周年記念事業として、実施日は5月30日、実施まで4か月、企画や投影計画、投影テスト、コンテンツの制作期間を考えると、間に合うかどうかぎりぎりの時期です。すべてスムーズに進まないと間に合いません。

早々、表技協の中でプロジェクトを立ち上げ、私はプロデューサーとして最適と思われるチーム編成に取り掛かりました。表技協には全国から様々なスキルを持つメンバーが参加しており、プロジェクションマッピングの制作についても経験豊富な方々が多くいらっしゃいます。その中でも岩国に最も近い広島に、なんと最適なメンバーがいらっしゃいました。広島を拠点に中国地方でクリエイティブ活動をされている「AAIひろしまPlan」の泉尾祥子代表です。

さっそく泉尾さんにお願いして、まずは岩国に出向いて青年会議所の方へのヒアリングと現地の様子を見てきていただきました。実は以前広島で「時空の階段」という3D立体視に対応したプロジェクションマッピングを実施したのですが、その時のメンバーが泉尾さんをはじめとした広島のクリエーターの皆さんでした。今回はその中から3DCGの泉尾さん以外に、3DCGの清水誠也さんと、アニメーション作家の宮アしずかさんに制作していただきました。そしてディレクションは東京の表技協メンバーである、阿部信明さんにお願いしました。

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▲図1    錦帯橋全景写真: ドローン撮影小林徹(COMMAND+N)


錦帯橋へのプロジェクションマッピングは、 果たしてできるのか?

錦帯橋は川幅約200mの錦川に掛かる、5つの木造の橋が連なる構造をしており、中央の3連はアーチ型(迫持式:せりもちしき)で、両端の2つは反りを持った桁橋構造をしています。橋の全長は193.3m、中央のアーチ型の橋はそれぞれ35.1mあります。橋脚の石の部分は高さが約7.4m、奥行きが下部で約13m、幅は下部で約7m程が4つあります。

出典:岩国市公式ホームページ http://kintaikyo.iwakuni-city.net/tech/tech1.html

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▲図2    錦帯橋の大きさ

はたして、この橋をどのようにプロジェクションマッピングするのか、まずはその規模感の設定や、考え方が難題として出てきました。もちろん、費用に糸目をつけなければプロジェクターの台数をふんだんに使用して豪華にすることはできるわけです。

下記がこの時に検討した課題です。

  1. 橋全体に投影するには幅193m、高さ約13mの巨大な建造物に投影する規模となってしまう。
  2. 川があるので正面から投影できない、ただし見学は屋形船からで水上から見学する。
  3. 橋は細いので画面の中に1つの橋を収める場合、解像度や輝度が足りない。
  4. 費用面から使用するプロジェクターは20,000lm 2台か10,000lm 3台である。

特に3は大きな問題でした。橋自体が細いので1画面で1つの橋を覆うとその橋に使える解像度は、たとえば縦が150dotに満たないかもしれません、また投影サイズは1,800インチ程になると思われ、20,000lmのプロジェクターでも不十分で、本来であれば1つの橋に3〜4台の20,000lmクラスのプロジェクターが必要となり、5連の橋全てをカバーしようとすると15〜20台が必要となります。この時点で橋の全景に投影するのは費用的には現実的でないことが分かりました。

コストを抑えて、錦帯橋の形状を生かすにはどうしたらよいか?検討を重ねた結果、橋脚部分を活かすことで、錦帯橋を表現することにしました。もちろん最後まで、太鼓橋自体の形が表現できなければ、錦帯橋で行う意味がないという意見もありましたが、太鼓橋を支える橋脚にフォーカスすることでも錦帯橋を表現することはできると考えました。その理由は、橋脚は橋と川をつなぐ中間の部分として位置しており、川に移る橋脚が表現できれば錦帯橋の存在感は十分表現できると考えたからです。この時点で、10,000lmでかつ4:3のアスペクト比を持つプロジェクター3台の使用を決めました。この比率であれば、橋桁の形状の縦横比に近く、解像度の無駄なく投影できるからです。

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▲図3 左:橋脚部分の投影範囲    右:投影ベースの位置と橋脚までの投影距離


3Dスキャニングやテスト投影などの事前準備

投影設計と並行して、制作に必要な準備も始めました。橋桁に正確に投影するには、橋桁の3Dデータが必要となります。あいにく錦帯橋に関する3Dデータはありませんので、作成する必要がりました。フォーラムエイトさんに3Dスキャニングサービスをお願いして、3Dのデータ化に取り掛かりました。今回の投影は橋桁だけですが、橋桁の上部に掛かる橋の一部にも投影できますので、橋の全体のスキャニングを行い、この点群データを元に、3DCG用のポリゴンデータを作成しました。(図4)

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▲図4 左:3Dスキャニングの様子    右:錦帯橋の点群データ

これが4月10日で、ここからCGの制作に取り掛かり、先ずはテスト投影のサンプルを制作し、18日には実際に使用するプロジェクター1台を持ち込み、3つの橋桁に順次投影して見え方を評価しました。(図5)

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▲図5 左:テスト投影の様子    右:ドローンでの空撮

今回の課題の1つにあるように、このプロジェクションマッピングは、記念事業に参加するVIPが乗る屋形船から見ることを想定して投影されます。つまり、最適なビューポイントは川岸からではなく、水上になるということです。それをどのように確認するかも今回のテスト投影の課題でもありました。あいにくこの時期は、まだ川に船を出してはいけない時期で船から見ることはできません。そこで採用したのがドローンの空撮による屋形船からの視点の再現です。この状態でモニターすることで、ビューポイントの問題もクリアできていることが分かりました。


いよいよプロジェクションマッピングの本番!


テスト投影の結果を反映してコンテンツ制作を行い、約1.5ヶ月で完成させることができました。

いよいよ、本番のプロジェクションマッピング「時空の架け橋」が実施されます、2013年7月に広島で行なわれた「時空の階段」から2年目にして、シリーズ作品として「時空の架け橋」の実施にこぎつけました。本番当日はあいにくの雨でしたが、大勢の見学者に来ていただき盛況のうちに終了できました。この動画はYouTube(http://youtu.be/kJ3rKsV3iQ0)で見ることができます。

写真は、前日の調整時、晴れの時と、本番当日、雨のときのものです。写真ではわかりにくいですが、実は雨の日は雲が空を覆っており、岩国基地のものと思われる明かりが雲に赤く反射して見事に橋の部分をシルエットとして映し出してくれました。これで懸案であった橋の形状も合わせてプロジェクションマッピングを楽しむことができ、プロジェクトを成功させることができました。

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▲図6 左:本番前日の1コマ(晴れ)    右:本番の1コマ(雨)


終わってみてわかった 錦帯橋を取り巻く自然に、感謝!

錦帯橋のある風景は、山間部と清流からなる自然と、それに加えて太鼓状の橋が見事なまでのバランスで共存する稀にみる絶景です。昼間はそれらの風景を十分堪能することができるのですが、夜の暗闇にもその美しさを表すことができないかと挑戦したのが今回のプロジェクトでした。当日の天候にも左右されますが、橋脚に投影することで、下へは川面への映り込みを、上の太鼓橋は雲の明かりによりシルエットとして見ることができました。映像だけではなく錦帯橋周辺の自然と一体となって初めて作品が完成しました。この状態を見ていただくことができたのが何よりの成功であると、錦帯橋のある自然に大いに感謝しています。このように、自然のなかでのプロジェクションマッピングは日々見え方が異なるので、常設として行われることがあっても飽きないのではないかと思っています。

※社名・製品名は一般的に各社の登録商標または商標です。



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(Up&Coming '15 盛夏号掲載)

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